アサヒ飲料株式会社
仲村 勝 様(生産本部 技術部 エンジニアリンググループ)
木ノ内 弘貴 様(富士山工場 エンジニアリング部)
※肩書は取材時のものです
アサヒ飲料株式会社様(東京都墨田区)は、「カルピス」「三ツ矢サイダー」などの清涼飲料水を中心に、全国で製造・販売を行う飲料メーカーです。静岡県富士宮市の富士山工場では、「アサヒ おいしい水」「十六茶」「ウィルキンソン」などのペットボトル飲料を製造されています。
富士山工場は、自動化取り組みに関する同社のモデル工場でもあり、排水処理の自動化や業務効率化、省人化など、さまざまな新しい取り組みをされています。特に排水処理工程では、ハックのオンラインTOC計BioTector B7000iとオンラインVFA計 EZ7200が活用され、従業員の方の作業負荷軽減や安定稼働、データ活用による高度な管理を実現しています。
今回は、富士山工場にて導入から稼働までを担われた仲村様と、現場で装置を運用されている木ノ内様に当社代表取締役の藤澤がお話を伺いました。
排水設備の状況と、排水の性状
はじめに、当社のTOC計とVFA計を利用いただいている排水設備の状況や、排水性状について教えてください。
木ノ内様(以下敬称略):こちらの工場には、嫌気処理設備と好気処理設備の二系統があります。排水の成分管理はかなり細かく行っており、主に排水の性状や負荷の変動をリアルタイムで把握するために、オンラインTOC計の比較検討の結果、BioTectorを導入しました。そして、嫌気処理ではVFAを自動測定できるEZ7200を利用しています。サンプル数が多いためサンプルポット2基を活用し、切り替えて測定を行っています。
例えば「十六茶」は文字通り、16種類の茶葉原料を使っており、負荷の高い茶葉も含まれています。また夏場に需要が伸びる麦茶はさらに負荷が高いです。このように、製品や季節によって、排水の性状や製造量は大きく変動します。
製造後には毎回配管の洗浄も行います。製造時間の長さにもよりますが、小ロットの場合には2時間に一度の頻度となり、洗浄工程からの低濃度排水には、殺菌剤なども含まれます。
さらにお茶とは別系統で、他工場で製造され市場から戻ってきた製品を処理しています。内容はコーヒーや糖分、乳成分など多様です。例えばコーヒーの場合、ブラックはそれほどでもありませんが、微糖やカフェオレになると、処理の難易度が上がります。

写真:左から木ノ内様、仲村様、藤澤
かなり内容のバラツキがあり、管理の難しさがよく伝わってきます。オンライン装置導入前はどのように管理されていたのでしょうか。
木ノ内:有機物に関しては、TOC計導入前はCODcr(*注:重クロム酸法による化学的酸素要求量)を管理指標としており、また嫌気処理の監視にVFAを測定していました。どちらも手分析による測定です。
CODcrは、日勤帯で15検体を1日1回、さらに、他の勤務帯で負荷調整用に4検体を1日2回測定していました。またVFAは日勤帯に1日1回5検体、遅番・夜勤の勤務帯でそれぞれ1回ずつ4検体を測定していました。あくまでもこれは標準的な場合であり、処理が悪化してCODの除去率が落ちてきた際には、追加の測定も都度行っていました。
部門直員の勤務時間中の分析時間を可視化、自動化への道のり
オンライン計の導入はどのように進められたのでしょうか。
仲村様(以下敬称略):私は2018年に前任者から業務を引き継いだのですが、当時、1日の原動部門の直員の勤務時間のうち、排水分析に占める時間が長いことが分かりました。これが次第に社内的にも注目され、「分析作業をどうにか短縮できないか」と議論されるようになりました。
木ノ内:元々、この工場はミネラルウォーターのみ製造する工場としてスタートしました。次第に製造ラインを増やしたことにより作業負荷がかかるようになりました。直員は朝9時から排水設備に出て分析を行い、昼頃にようやく戻ってくるほど、午前中は分析に追われていました。CODcrはサンプル前の加熱だけでも2時間かかります。
仲村:そこで排水分析業務に特化して直員にヒアリングし、まとめました。工場は24時間稼働しているので、日勤以外の遅番・夜勤でも、同様の傾向分析をしています。そのすべてが対象です。CODcr、VFA、SSといった各指標について、サンプリング、準備、分析に費やす時間をグラフにして可視化しました。他にも、例えば現場にサンプリングに行く際には、500mLや1Lといったポリ容器を持ち、サンプルを集めてきます。このような作業は、特に夏は暑さも加わり重労働です。
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木ノ内:このように「一日の業務で忙しいのは何か」という原因を追究すると、やはり排水の分析に時間がかかっていることが改めて認識できました。全体の作業分析をした明確な結果なので、ここに注力して進めていくことになり、まず最初に着手したのがTOC計でした。
オンライン計選定のポイントは、「安定稼働」
オンラインTOC計の比較検討で、BioTectorを採用された理由はどのようなものでしたか。
仲村:元々、公共下水や排水処理場など、さまざまな情報を収集してきましたので、その知見や、CODcr単体を自動で測れる装置が当時は見つからなかったこともあり、CODcrの代替指標として連続測定可能なTOC計を探しました。その中でBioTectorは、連続測定器として安定稼働できると判断し、採用に至っています。
木ノ内:仲村の前任者の頃から、いろいろなメーカーさんのTOC計を比較検討して、ハック社の製品が一番要件を満たせそうだということになりましたね。
仲村:はい。具体的には、検討の初期段階では、排水の「詰まり」のリスクについて考えておりました。サンプリングチューブの径といったシンプルな観点です。そして酸化方式についても検討しました。燃焼式の場合は、燃焼酸化の際に生じる煤が蓄積することによる停止や、燃焼管が割れてしまうこともあると聞いたことがありました。TOCは24時間測り続けるため、すぐに故障してしまうと困ります。
インラインでの安定稼働ができるものを常に目指していたので、BioTectorはチューブの径が大きく、湿式のため燃焼管の問題による停止もなさそうだったため、サンプル測定のデモ依頼をしました。
調整槽の出口や、低濃度調整槽側のCODが比較的低めのところは、相関がとりにくかったと思われる部分もありましたが、一般的な相関関係の指標を見たときに、0.8程度の相関が得られ、問題なく測れるという方向性が見えてきました。そこで実機の貸し出しを受け、さらに1~2週間ほどデモを実施しました。
VFA計のほうはいかがでしょうか。
仲村:ガスクロマトグラフィーや間接測定などを含め、いろいろなことを考えました。しかしVFAをオンラインで自動測定できる製品は世界でもEZ7200だけということでしたし、まずは相関性が取れるということで選択しました。今、手元にある指標を完全自動化して測りたかったので、「自動化できる」と謳われているのであれば、あとは排水処理設備全体でVFA計に排水を送るシステムを組み込めばできるだろうと考えました。そして当社の直員がこれまでに行ってきたVFAの手分析を代替する装置として、しっかりと測定してくれるかどうかという点が重要でした。
評価には時間がかかりました。
まずはサンプルを送って、同じものを5回測定してもらいました。相関係数は0.9以上と十分な値が得られたため、判断基準としては問題ありませんでした。相関が取れない場合は、排水を希釈する必要が出てきます。そうなると希釈用の配管をどのように設計に組み込むかを検討しなければなりません。
その点、希釈なしでそのまま測定できることは大きなメリットでした。また同時に、評価の仕方でも悩みました。対象サンプルとしてどこを取っていくか、測定レンジをどのくらいの範囲で測定しようか、といった検証にも難しさがありました。その後2週間ほど実機によるデモを実施しました。
どちらの装置もデモがうまくいきましたが、その後はどのようなプロセスがあったのでしょうか。
仲村:一般的なことかもしれませんが、会社として全く新しい初号機を入れることになるので、これらの装置の精度がどれほど高いか、そして本当にこれだけの投資をする価値があるか、ということを説明することには時間を要しました。排水分析の負担軽減は、一番焦点を当てていたところですから、それに対してどれだけのインパクトがあって、時間をどれだけ創出できるかということについてです。CODcrに係る部分が大きく、オンラインTOC計の導入により、日勤・遅番・夜勤帯の合計で約3時間強の時間が省力化できることが分かりました。
木ノ内:約3時間強という分析作業の削減時間ですが、これがなくなることで業務スケジュールなども大きく変更できました。
仲村:そうですね。同時に行う他の分析をどのようなタイミングで実施するか、ということにも影響があります。測定に係るインパクトを示すタイムチャートや、測定誤差、選定理由などを見える化・数値化し、工場の先輩方、上司、皆さんと相談しながら時間をかけて資料を作成しました。そして、それを四半期に一度行われる社内会議を活用して説明を重ね、導入に至りました。
装置の安定稼働と、導入のメリット
実際に稼働して数年が経ちましたが、その後の状況はいかがでしょうか。
仲村:装置は順調に稼働しており、分析負担も減りましたし、社内からの賞賛もありました。結果として連続測定も相関のあるグラフが取れました。
具体的には、手分析で3時間に一回測定しているCODcrの値とTOC連続測定の値は高い相関が取れており、手分析の合間をTOC値が補完していることが示されました。このようなデータが取れたことから、BioTectorは連続測定器として運用面でも十分に利用できると評価しています。

木ノ内:VFAの手分析では、加熱・加温やろ紙によるろ過など、工程が多く、薬品も5種類ほど使うため、作業員にとっては危険や負担が大きい作業でした。自動化によってサンプルをそのまま測定できるようになったことは、非常に助かりました。
分析業務というのは時間がかかりますよね。そのため、分析をしただけで満足してしまいがちになります。しかし自動化して時間ができたことにより、よりしっかりと排水処理が安定稼働できているかを検証することに時間がかけられるようになりました。自動化は、排水以外にもさまざまな設備で進めていますが、自動分析でデータが出てくるということは、やはり大きな違いがあります。空いた時間に保全やメンテナンスを実施して、トラブルが起こらないようにできるからです。

稼働中のオンライン計:左がVFA計EZ7200、右がTOC計BioTector B7000i
TOC計とVFA計のオンライン化による主なメリットは、3点あります。
まず1つ目は、作業負担の軽減です。原動部門は1名体制ですべてを担っています。分析以外の作業ももちろんあるので、作業負担の軽減ができたのがよかったです。また作業者は「何かあったらどうしよう」という不安が大きかったですが今回の導入にて心理的安全性も向上しました。このことは、先ほど仲村がお伝えしていた資料に盛り込み、本社にも強く伝えてもらったことでもありました。
2つ目に、排水処理設備の項目の重点監視ができたということです。自動測定かつ測定結果が手分析より早く出るようになったので、測定回数を増やして傾向管理がしやすくなりました。
3つ目に、作業者の技量差によって測定誤差が出ることを防止できたことです。新しいメンバーが加わると技量差が生じがちですが、自動分析により監視の精度が均一化された点も、大きなメリットです。

現場での課題と工夫
このような明確なメリットをお伺いでき、嬉しく思います。
最後になりますが、排水設備を担当されている立場から、貴社の環境への取り組みと今後の展望についてお聞かせください。
仲村:アサヒグループ全体では「環境ビジョン2050」を掲げ、カーボンゼロや水資源の再利用などに取り組んでいます。富士山工場でも蒸気使用量削減や水使用原単位の低減など、環境負荷低減に積極的に取り組んでいます。
木ノ内:工場としては、排水処理の完全自動化・無人化を目指しています。人材不足が深刻化する中、安定した測定と排水処理ができる仕組みづくりが重要です。自動化の装置については、さらなる効率化に向けて要望も挙がっており、解決すべき課題もあります。装置の運用やメンテナンスの工夫を続けながら、排水処理の安定稼働と効率化をさらに進めていきたいと考えています。
仲村:排水管理の強化として、他工場でも自動化装置の活用を展開していきたいと考えています。
※「カルピス」はアサヒ飲料株式会社の登録商標です。
企業概要(2026年8月時点)
・社名:アサヒ飲料株式会社
・本社:東京都墨田区
・富士山工場:静岡県富士宮市
・事業内容:各種飲料水の製造、販売、その他関連業務
・URL:https://www.asahiinryo.co.jp/index.psp.html