Hachジャーナル

【海外事例】ラボ用TOC計で、カンザス州の浄水場オペレーションを改善

※本事例はアメリカの浄水場に関する事例紹介です。関連法規については、日本国内のものと異なる点がございます。あらかじめご了承ください。

アメリカ国内の浄水場では、合衆国環境保護庁(EPA)の消毒副産物規則(DBP)¹ が基準となっています。この規則は、水に含まれる有機物の除去を義務付けることで、排水系の水質を確保し、浄水場の運用を規定しています。しかし、残念ながら多くの施設では、規制に合わせて設備やオペレーションを発展させることができず、困難な状況に立たされています。

消毒副産物規則が制定されてから10年以上が経過しているため、正確かつ信頼性のある全有機炭素(TOC)の測定は、現時点で浄水場の標準となっているはずですが、実際にはそうとも限りません。カンザス州ダグラス郡のある浄水場では、正確なTOC測定とテストに課題があり、既設のTOC分析装置では校正に高額な費用がかかり、長いダウンタイムもあったため、ハックのラボ用TOC計QbD1200をデモすることになりました。

¹消毒副産物規則(DBP):消毒副産物とは、水を化学的に消毒する際に利用する塩素やオゾンなどが、水中に自然に存在する有機物と反応して生成される化学物質、有機物、無機物を指します。消毒副生成物による飲料水への曝露を減らすための米国環境保護庁(EPA)による規制は、人口1万人未満の地域水道と非一時的な非地域水道システムに適用されています。トリハロメタン(THM)、ハロ酢酸(HAA)、亜塩素酸塩、および臭素酸塩等の消毒剤副生成物への曝露を制限するためにこの規則を策定しています。

浄水場の概要と課題

カンザス州ダグラス群農村水地区3が所有するこの施設は、2つの浄水場と280マイル(約450km)の配水網を運営しています。この施設は、3名のスタッフで約3 MGD(MGDは、百万ガロン/日。ここでは1日の処理量が300万ガロン=約11,356㎥) を処理しているため、効率性と利便性を重視しています。また、規制要件を満たすため、処理過程において一定割合のTOCを除去する義務があります。

浄水場では、濁度やTOCなど多くの一般的なパラメータを評価しています。しかし、この施設は湖の浅瀬に位置しているため、特に冬場は天然有機物(NOM :Natural Organic Matter)による濁りが少ないことがあります。このため、TOC除去率を国に報告するための、TOCの測定は特に重要になります。正確なデータがとれないと、規制要件を満たすのに十分な炭素を除去できないリスクがあるからです。

他の浄水場と同様に、ここでは以下の点を重視しています。
– TOC除去率規制への対応
– 排水中のDBPを回避しながら、凝集剤処理を最適化
– 設備を維持し、ダウンタイムを最小限に抑制

QbD1200を導入する前、この浄水場では隔膜式のTOC計(メンブレン・コンダクタム、既設分析装置)で測定していました。この施設では、TOC計に関して、いくつかの問題に直面していました。第一に、既設装置による測定値が、施設がサンプルを送っている州認定の第三者機関と一致しませんでした。

カンザス州ダグラス郡地方給水第3地区 浄水場

カンザス州ダグラス郡地方給水第3地区 浄水場

「我々の結果とカンザス州の結果には、差異がありました。25%と35%の除去率の違いは、文字通りアルカリ度の違いです。私たちは常に最低でも40%の除去を目指していますので、アルカリ度が州の結果と違っていても、コンプライアンス違反になることはありません。 しかし数値が良くても、州の基準に達しておらず、装置に戻さなければならないこともあります。これにはがっかりです」 ―マイク・ルーカス氏(トライディストリクト水処理施設 ヘッドオペレーター)

浄水場は測定値を信頼できなかったため、凝固剤の投与量を予測することは、天気を予測するかのような先行きの不安がありました。そこで、コンプライアンスの範囲内に数値をとどめるために、凝固剤の過剰処理を行っていました。読み取り値が認定ラボと同じではない場合に備え、バッファを残すのです。規制を満たすために可能な限りの施策を行った結果、凝固剤にかなりのコストを費やしていたのです。

残念なことに、このような状況では、浄水場はサンプルがコンプライアンスから外れたときのダメージコントロールに、時間と費用を費やすことになります。それだけでなく、TOC規制値に一度でも逸脱すると、一般市民への通知郵送費だけでも約15,000ドルかかるのです。さらに、既設装置での測定には、運用と予算の問題がありました。装置が故障すると、ただメーカーの指示に従うしかない上、数千ドルの損失を出し、何週間も稼働できない可能性もあります。

加えてメーカー製以外の試薬に対応していないため、浄水場は他の試薬を購入したり、自前で作製したりすることによりコストを削減するという選択肢がありません。浄水場では、メンテナンスや試薬の購入に約5,000ドルを費やしており、機器の交換にかかる費用も増加しています。

しかし、浄水場がTOCの測定値を信頼できれば、化学処理を最適化するチャンスがあり、コスト削減、総所有コストの削減、そしてより高い水質を提供することができるのです。

ソリューション

既設のTOC分析装置メーカーがサポートを終了したため、浄水場は装置の更新を迫られることになりました。「ハックが新しいTOC計をリリースしたカンファレンスに参加しました。カンファレンスではデモ機が用意されており、それは素晴らしい装置でした。すぐにデモの予約をしました。」(ルーカス氏)

QbD1200 ラボ用TOC計

QbD1200 ラボ用TOC計

凝集剤処理の最適化に必要な、精度の高いTOCのデータを得ることができ、またデモ期間中に、ローレンス市の認定ラボにサンプルを持ち込んだところ、QbD1200とローレンス市のデータとの相関も取れたことで、チームは測定値に新たな信頼を獲得し、凝固剤の投与量を分析、最適化することができ、プロセスをコントロールし不必要な化学薬品処理を削減することができるようになったのです。

「凝集剤を変更して1ポンド(約454g)あたり10セント(約3.7Lあたり1ドル)節約できるとしたら、年間45,000ポンド(約20.4トン)を購入するとしたら、かなりのコスト削減になります。私たちはわずか3 MGD(1日の処理量:約11,356㎥)の施設です。他の施設にも参考にしていただきたいです。法令順守としてのTOC以上の効果が期待できます」

浄水場での水処理プロセスをQbD1200により最適化できた具体的内容

– ポリマー供給量を40%削減したことにより、年間12,400ドル(約140万円)のコスト削減
– 塩化第二鉄の投入量を25%削減したことにより、2,200ドル(約25万円)のコスト削減
– 試薬の内製化とハックのメンテナンスプログラムにより、14,250ドル(約160万円)のコスト削減

今、オペレーターが3人のこの浄水場では、QbD1200とオートサンプラーを組み合わせて、多くのテストを実施しています。手動でプロセスを管理することなく、サンプラーをセットアップするだけでテストが可能となったのです。「システムをセットアップしてボタンを押すだけで、結果を確認できます」(ルーカス氏)

ダグラス郡の浄水場は、コスト削減や処理の最適化だけでなく、QbD1200の使いやすさとハックのフィールドサポートを高く評価しています。これらにより、施設は少ない作業時間、フラストレーション、コストを最小限に抑えながらTOCを確実に測定できています。「使い方は簡単です。子どもにもすぐに操作できるでしょう。すべて色分けされていて、試薬も自分で作製できます。そしてリアルタイム収集されたデータにより、即座に判断することができます。この作業にコストをかけるべきではないのです。また、以前より正確に測定できるようになりました」

まとめ

QbD1200の導入により、正確な測定、手間のかからない操作、迅速な校正、試薬の柔軟性など、すべてが業務改善に貢献しています。TOC除去のプロセスを改善し、化学処理の選択、量、頻度を最適化することで、ここでは年間3万ドルから6万ドル(約340~680万円)の節約を見込んでいます。ハックの装置は、使いやすいだけでなく、卓越した総所有コストを実現しています。

*QbD1200 の最新モデルは、QbD1200+となります。

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