Hachジャーナル

【トピック】官能試験を機器による測定へ ~産業における測色

はじめに

一言に「色」といっても、その意味するところは様々です。絵の材料、ファッション、デザイン等、色の利用は多種にわたります。

工業製品にとって色は、原材料や製品の品質の指標とみなすことができます。測色によって得られるデータは、以下のような目的で製品の品質管理や生産管理に活かされています。
製造時の色の均一性を確保するため、美しさを追求するため、パフォーマンス指標として、製品の状態を示すため、リファイニング(精製)/プロセスのレベルを示すため

人間の目による色認識

人間の目は、何百万もの色調を見分けることができる高感度の感覚器官です。しかし、人間の脳は色を正確に記憶したり検証したりすることができません。

例えば、図1のような二種類の青を見た場合、数秒後には「青い四角だった」というように、基本的な色相しか思い出せません。
「明るい青」、「暗い青」というある程度の区別はできても、後になって全く同じ色を多様な青の中から選び出すことは困難です。

2種類の青

図1

そのため、色の違いの把握には、あらかじめ用意された標準色とサンプルを直接比較することが行われています。

また、人の目は、環境や周囲の影響を受けやすく、「錯視」が起こりえます。
例えば、色はその隣接している色との関係により異なって見える場合があります。図2は静止画ですが、交差しているポイントの色が動いて見えてしまいます。

黒字にグレーの格子が入った図

図2

色覚異常もよく知られている人の目の認識差です。
図3の石原色表は「二色性エラー」の認識テストで用いられています。

仮性同色表(石原式色覚検査表)

図3:仮性同色表(石原式色覚検査表)

 

先天色覚異常は日本人男性の20人に1人(5%)、日本人女性の500人に1人(0.2%)といわれており*、また後天色覚異常もあり、決してまれなものではありません。(*参照元:神奈川県医師会「色覚異常について」

このように、人の目に見えているものは、人間の記憶や脳の認識において、相当の個人差があり、また環境によって大きく左右されます。
そのため、産業分野における官能試験で色を識別する作業を行う場合には、人の五感に関わる試験評価を、機器に置き換えることが望ましいと考えられます。

機器による色の測定

機器による測定は、基本的には光の波長を利用して実施されます。
測色の原理は1931年に国際的なレベルで確立され、光源、標準観察者、CIEカラーシステムと呼ばれる色識別システムが標準化されました。ISO 11664では、CIE L*a*b*-色空間と三刺激系が定義されています。

■ CIE L*a*b*(エルスター・エースター・ビースター)-色空間

CIE L*a*b*(エルスター・エースター・ビースター)-色空間の図

図:ISO 11664 Colorimetry – Part 4: CIE 1976 L*a*b* Color space

L*a*b*色空間では、3つの座標軸により色を表現することができます。

  • 上-下のL*値は色の明るさを示します。(L*値は常に正で、理想的な黒は0、理想的な白は100)
  • 左-右のa*軸は赤色は正のa*値、緑色は負のa*値で示します。
  • 手前-奥のb*軸は黄色は正のb*値、青色は負のb*値で示します。

 

この方法で、サンプル(試料)と見本(標準色)の色を数値化し、それぞれの差をデルタL*値、デルタa*値、デルタb*値とし、その合計の距離 “デルタE*”によって色の違い(色差)を数値にすることができます。

このように、機器による色の測定によって、色を数値化し管理・認識していくことが可能になります。また、個人によるばらつきや誤差がなくなるメリットがあります。

Hachの液体分光測色計(色差計) LICO

ハックでは、液体の測色に特化した装置「LICO620/690」を取り扱っています。LICOは、「目視」によって行われてきた液体の色の測定を、より実施しやすくするために開発されました。

「機器による色測定」により、的確かつ客観的なデータを取得することが可能となることはもちろん、結果を直接印刷したり、ネットワークシステムに転送したりすることで、より製品や材料の品質管理の精度を高め、容易にします。また、キュベット(サンプルセル)を自動認識し、測定時間も短くシンプルに測定することが可能なため、作業者のワークフローを改善できます。

色の測定は、様々な業界で多様な計測が実施されています。液体の色の測定に関するものだけでも、多数の標準液といわれる指標があり、一種のサンプルに対して複数種の標準液に照らし合わせて測定するケースもあります。この場合、それぞれの標準に準拠したコンパレータシステムを駆使して計測データを記録します。

LICOは、このような場合において非常に利用しやすい製品です。数ある液体のカラースケールを1つの装置に統合しているため、一度の測定で様々な標準液の測定データを呼び出し記録することが可能です。また校正も簡単にできるため、計測や管理がスムーズです。さらに測定するサンプルが、取り扱いに留意する必要のある性質の場合には、使い捨てのキュベット使用することにより、作業者の安全が確保されます。

LICOシリーズの歴史

図:30年以上に渡るLICOシリーズの歴史
初期モデルである LICO 200を1991年10月に発売以来、継続的に改良・最適化し世界で1万台以上の利用実績を誇ります。

LICOには、620/690という2機種があり、測定対象や範囲の差によって最適な製品を選択できます。初期モデルである LICO 200を1991年10月に発売以来、継続的に改良・最適化し世界で1万台以上の利用実績を誇ります。

LICOの適用例

LICOは、透明な液体の色に特化した製品です。LICOには重要なカラースケールが1台に搭載されています。

LICO 620は最も一般的な液体の色の判定システム、ヘイゼンカラー(APHAカラーまたはPlatinum Cobalt、 PtCoとも呼ばれる)、ガートナーカラー、ヨウ素カラー、セイボルトカラー、ASTM D 1500が搭載されています。

LICO 690は上記に加えて、各国局方Pharmacopoeia(欧州、米国、中国)、ビールの色に使われるEBCスケール、油脂によく使われるASTMカラーシステムを含む26のカラースケールを搭載しています。

図:半透明の液体を対象とした様々な「色の判定システム」

図:半透明の液体を対象とした様々な「色の判定システム」

主な導入業界とアプリケーション例 (製薬/塗料・樹脂/ 化学/ 石油/ 食品・飲料/ 化粧品)

製薬メーカー
• 点眼剤の最終製品

化学メーカー
• 親水性液体の色測定
• アミンのような毒性のある溶剤での色測定
• 界面活性剤(化粧品原料)のPt-Co測色とHess-Ives測色
• 化学物質(イソフルオロジオン)とポリエステル

農薬メーカー
・排水している川の原水(コンプライアンス)

肥料メーカー
・メラニン樹脂の色と濁度の計測

菓子メーカー
・原料油中のルイボスカラーの検出

まとめ

近年のDX化により、ありとあらゆる数値をデータ化し、個人の能力に依存しない形で分析、蓄積していく流れは加速しています。色の測定を目視に頼ることの難しさに加え、このような背景からも機器による色の測定をうまく活用し、製品製造や品質管理の場に活かしていくことがより重要です。

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