課題
オランダのオアイエンの下水処理場には、流入・流出水をモニタリングする成分分析装置がなく、第三者機関による定期検査に頼っていたため、産業からの排水による、C/N/P負荷の急激な増加に対して、機動的な対応ができませんでした。リン酸塩の排出規制値を超過し、パラメーターが急上昇した後には費用のかかる是正措置が必要になりました。
ソリューション
当初、ハックのリン酸塩分析装置(Phosphax sc*)およびアンモニウム分析装置(Amtax sc*)を使用した排水制御システムの設置を検討していましたが、オンラインTOC/TN/TP計 BioTector(バイオテクター)B7000を設置して排水をモニタリングしました。初期の結果を受け、流入水をより詳しくモニタリングするために2台目のBioTectorが設置され、産業排水と公共排水の混合をより深く把握し、工業排水源から頻繁に発生する異常値を特定しました。
(*Phosphas scおよびAmtax scは、総代理店である東亜ディーケーケー社の取り扱い製品です。)
ベネフィット
オンラインTOC/TN/TP計 BioTector B7000は、下水処理場の管理者に水の成分変化を警告し、汚染物質の探索と追跡を迅速化します。BioTector B7000は、リン酸塩除去用の鉄塩の投与体制を自動化し即時に行うため、障害後のプロセスの復旧に伴う高額なコストから解放されます。この下水処理場は、BioTector B7000が設置されて以来、リン酸塩の排出コンプライアンスを遵守しています。
背景
オアイエン下水処理場はオランダの北ブラバント州にあり、4つの地方自治体(オス、ランデルト、グラーブ、ロスマーレン)の下水処理を担当しています。これらの地方自治体には約35万人が住んでおり、地域の主要産業や製薬企業が数社あります。処理場の処理能力は 12,250 m³/h です。
・さまざまなハックのテクノロジーを活用
この下水処理場は、ハックのSCプラットフォームをベースとしたオンライン・ポートフォリオが充実しており、複数のSC1000コントローラー*、Amtax sc*、Phosphax sc*、Nitratax sc*、LDO sc*、Filtrax*、A-ISE*、Solitax sc*、および2台のRTC-リン制御モジュール*(1台は汚泥濃縮プロセスからの汚泥返送水用の1チャンネル、もう1台は両曝気槽のリン酸除去用の2チャンネル)が設置されているほか、ラボには分光光度計DR3900*が設置されています。
(*印の製品は、総代理店である東亜ディーケーケー社の取り扱い製品です。)
・排出規制違反
オアイエン下水処理場は排水に成分分析装置を設置していなかったため、水の実際の成分についてほぼ把握していませんでした。定期的に義務付けられている第三者機関による検査では、成分レベルをわずかに把握するだけでした。さらに、地元の工場からの排出量の急増も追跡することもできず、オアイエン下水処理場は信頼性の高いモニタリングや解明が困難なリン酸塩の排出に悩まされ、その結果、リン酸塩の排出量を削減することができなかったのです。
解決策と改善点
・排水モニタリング
当初、オアイエン下水処理場の出口アプリケーションは、ハックのリン酸塩分析装置(Phosphax sc)およびアンモニウム分析装置(Amtax sc)を使用した測定制御システムが検討されました。しかし、水処理プロセスを最適化するためには、何が入ってきて、何が出ていくかを知ること、下水処理場のC/N/P比を把握することが重要です。
オンラインTOC/TN/TP計 BioTector B7000は、実績のある独自のオンライン TOC/TN/TPテクノロジーにより、高精度で信頼性の高い結果を提供します。本装置の設置と試運転は計画通りに進み、下水処理場に全面的に採用されました。年に数回、BioTectorによる分析結果は第三者機関の分析結果と比較されます。この比較により、オンラインによる測定は正確であり、下水処理プロセスの改善に役立つことが確認されました。
・流入水の急増
担当のリタ・ヴァン・デ・クラッツ氏は、下水処理場の流入水の成分は時間の経過とともに変化しており、その多くは産業排水が原因であると報告しています。
「障害後のプロセス復旧には多大なコストがかかり、それに伴う情報が不足しているため、私たちは下水処理場の流入水のC/N/P比に関する知見も非常に重要であると判断しました。排水規制値が満たされていない場合、私たちのプロセスの問題なのか、外部からの排水なのか、根本的な原因を知りたいのです。」
最終的に、2台目のBioTectorを導入し、流入水に影響するC/N/P変動に関する知見を得て、管理当局による汚染物質の探索・追跡プロセスをスピードアップすることができました。また、流入水のTOC/TN/TP測定を追加することにより、リン酸除去用の鉄塩の投与システムを自動化・制御することが可能となりました。
まとめ
オアイエン下水処理場は、流入水と排水の成分についてより詳しく知る必要がありました。その結果、BioTector B7000を設置し、排水処理中のC/N/Pを確実にモニタリングすることが可能となりました。
第2段階では、流入する廃水のC/N/P比を把握するため、2 台目のBioTector B7000を導入しました。この装置は流入水をリアルタイムで確実にモニタリングし、突然の成分変化にも迅速に対応できるため、そのような障害の後にプロセスを復旧するための多大なコストが不要になります。リアルタイムのデータにより、プロセスに問題があるのか、それとも外部からの排水によって引き起こされる問題なのかについての知見が得られます。
さらに、流入水の TOC/TN/TP 測定により、設備担当者はリン酸塩除去用の鉄塩の投与システムを自動化・制御することができます。リタ・ヴァン・デ・クラッツ氏は、「BioTector B7000で流入側と放流側をモニタリングすることで、プロセスを順調に進めることができており、以来、リン酸塩の規制値を超えていません。」と結論付けています。