昨今、地球規模での環境保全の取り組みは待ったなしの状況にあります。ハックジャパンの事業領域の一つである水質分析装置に関連していえば、産業界において、水の利用や排出は必ず行われているだけに、企業や組織の大小を問わず、優先順位の高い取り組みとして対応が求められています。
本記事では、トルコ・イスタンブールの市営下水処理場が、都市部の拠点において流入前の全有機物を直接モニターできるTOC (Total Organic Carbon:全有機体炭素量) をBioTectorで計測することで、産業排水の有機物負荷を監視、このことが環境保全はもとより多くのメリットをもたらす結果となった事例をご紹介します。汚染物質が一度 流れたら取返しのつかない排水において、日本国内でも、公定法にあるCODやBOD管理に代わり、短時間で全有機物の管理を直接測定できるTOCでのオンラインによる監視を長期間かつ連続測定 したいというご要望は多く聞かれます。今後の方針検討のご参考になりますと幸いです。
概要
都市部の処理施設に流入する多量で規則性のない産業排水は、プラントの運営を妨げることがあり、また施設が政府準拠の排出規制を遵守することを難しくしています。中央監視システム上の汚染負荷を監視し、処理施設上流の排水パイプラインを測定するために水質測定器を導入した場合のメリットを実例で紹介します。排出量モニタリングを行うことで、プラント運営者は事前情報を提供し、必要な措置を講じることができるようになります。排出に責任のある産業を特定し、管理するための抑止力としても機能するといったメリットを提供できます。
背景
今日、天然資源の急速な枯渇や環境問題の増加により、排水管理は政府および産業施設の双方にとって重要性を増しています。
特に産業活動からの排水モニタリングは重要であり、都市部の処理施設が正しく稼働するための重要な要素になっています。さらに流入する排水の請求プロセスや、規制値を超えた場合の罰則を決める際にも重要な役割も担っています。
自治体の排水処理施設では、汚染の度合いが高く変則的な排水が大きな懸念事項となっています。有機物を多く含む物質は、処理施設の操業に大きな支障をきたす可能性があります。
排出量モニタリングステーション
水質監視システムは比較的複雑な構造をしており、多くのキーコンポーネントを慎重に組み立てる必要があります。
- 長期間使用できる信頼性の高い分析装置
- 過酷な環境条件に耐える堅牢なキャビネットの設計・構築
- 使い勝手のよいサンプリングおよびサンプル取り扱いシステム
- データ収集、転送、モニタリングのためのシステム
常に正確な結果を得るためには、産業排水の厳しい環境下でも使用できる、安定した分析装置を利用することが非常に重要です。BioTector(バイオテクター)B7000の優れた湿式二段階酸化システムと効果的なセルフクリーニングシステムにより、オンラインTOC測定は、導電率などの基本的なパラメータ測定と同様、簡単に行うことが可能です。
全有機炭素の測定
この市営下水処理場では、プロジェクトの一環として8台のオンラインTOC計BioTector B7000 を設置し、11の個別放流地点の有機物負荷を監視しています。このうち3台は2チャンネルで動作し、2つの個別地点でオンライン測定を行うことができます。下のグラフは、3ヶ月間に分析装置が行った測定結果と、規制当局の研究所が行った比較測定の結果を示しています。
BioTector B7000は、独自の湿式二段階酸化方式の技術により、最も過酷な産業環境においても、正確な測定結果を提供し、問題がなく信頼性の高い運用を実現します。
メリット
- 排水処理施設の保護
- 環境保全
- 排出負荷に応じた請求額を決定
- 超過限度量のトラッキング
- 違法な排出手続きに対する抑止力
成果
BioTectorが設置されたシステムは、イスタンブールの下水道ネットワーク内の汚染の可能性がある11箇所で、瞬時かつリアルタイムにTOC(全有機炭素)を測定することができます。この分析装置は、産業排水の厳しい変動条件に合わせて設計されており、長期間の稼動と正確な測定結果を保証しています。
測定値を瞬時に得られるため、制限値を超えた場合には素早く判断することができ、自治体の排水処理業者は高負荷の排水が施設に到達する前に、必要な措置を取ることが可能となります。
このプロジェクトは類似の排水処理施設の手本となり、近い将来同等のシステムが増えることでしょう。