
溶存酸素とは、水中に溶け込んでいる酸素のことを指します。溶存酸素は生命維持や処理プロセスに必要なものですが、溶存酸素による酸化が製品の香りや味を劣化させたり、機器を腐食、破損させたり有害要因になる場合もあります。このため、溶存酸素量は水質管理や環境、食品・医薬品製造など、さまざまな分野でモニタリングされる重要な指標となっています。溶存酸素測定の目的は品質管理、規制遵守、プロセスコントロールなど多角的です。
溶存酸素とは?
溶存酸素(DO)は、水中に存在する酸素の濃度を示す指標です。通常は mg/L または ppm、低濃度測定の場合ppbで表されます。
溶存酸素量に影響する要因
水中の酸素は、主に大気との接触や光合成によって供給され、生物の呼吸や化学反応によって消費されます。
- 気圧:気圧が高いと溶存酸素量は増加。標高が高い場所は気圧が低いため低下
- 温度:水温が高いと酸素の溶解度は低下
- 塩分・不純物:塩分濃度が高いと酸素溶解度は低下
- 生物活動:微生物や魚類の呼吸、植物の光合成が影響
溶存酸素の測定方法
溶存酸素の測定は試薬を使い酸化還元反応を活用する手法(ウィンクラー法など)と、測定器(センサー)による分析(隔膜式と光学式など)があります。
- ウィンクラー法:酸化還元反応を利用した滴定法。精度は高いが手間と技術が必要
- 隔膜式センサー:酸素が膜を通過し電極で電流変化を測定。リアルタイム測定に対応
- 光学式(蛍光式)センサー:蛍光消光現象を利用。メンテナンス性・長期安定性に優れる
ウィンクラー法などの手分析は手間がかかり、専門の技術を要すほか、色で識別するために測定する個人の差が出てしまう場合があります。またサンプルをラボに持ちこみ測定すると、環境の変化から、サンプルの状態が変化する可能性があります。そのため、産業界などの正確性がより求められる溶存酸素の測定は、個人差によらず現場で直接測定可能な装置による測定が理想的です。
ハックの溶存酸素計Orbisphere(オービスフェア)のセンサーは隔膜式・光学式の両方がございます。どちらも多くの業界・分野で利用されています。
(詳しくはこちら→Orbisphere製品ページ)
用途別の測定器の選び方とポイント
高濃度酸素の計測に適した方式
- 対象例:環境水、養殖池(魚介への酸素供給)、排水処理場(好気性処理でのブロア制御)
- 推奨方式:光学式(蛍光式)センサー
- 理由:電極内部の劣化がない。隔膜の交換が不要。メンテナンス性に優れる
低・中濃度酸素の計測に適した方式
- 対象例:超純水、ウェハー洗浄、発電所の系統水、ビール、医薬品製造、石化業界の有機溶剤や石油精製プロセス(溶存酸素濃度:数ppb~サブppbレベル)
- 推奨方式:隔膜式センサー
- 理由:電極内部の劣化がない。隔膜の交換が不要。メンテナンス性に優れる
| 項目 | 隔膜式 | 光学式 | 優位性 |
|---|---|---|---|
| 定量下限 | 0.1ppb | 0.6ppb | 隔膜式:超微量領域での安定性に優れる |
| 応答性 | < 7.2 秒 | < 30 秒 | 隔膜式:プラント起動・停止時の追従性に優れる |
| 流量・変圧変動 | 有 | 無 | 光学式:流量変動の測定値に影響を受けない |
| 保守頻度 | 約3か月 | 1年 | 光学式:電極洗浄、隔膜・電解液の交換不要 |
| ランニングコスト | 高 | 安 | 光学式:保守・校正時間 30分以内で工数削減 |
溶存酸素計の設置パターン
高濃度酸素の測定の場合(池など)、ポータブル型やプローブを直接測定水に投入したり、すぐそばに設置したりするような形式が多くみられます。
低・中濃度酸素の計測の場合、プロセスの状況に応じて測定器の設置にはインライン、オンライン、オフラインの使い分けがされています。
- インライン測定:直接配管にセンサーソケットを設置し、サンプルをダイレクトに測定
- オンライン測定:配管からフローチャンバーへサンプルを直接流入させ測定
- オフライン測定:専用デバイスで製品容器中の溶存酸素を測定(飲料など封入された製品をピックアップ)
よくある課題と対策のポイント
ハックでは、お客様の特定のプロセスアプリケーションにおいて溶存酸素レベルの監視と管理を向上させるために必要な測定器を提供しています。
プロセス中の溶存酸素の値の上昇の挙動がないにもかかわらず、下流側で何らかのトラブルが散見される原因として、「溶存酸素計の検出限界以上の変動を捉えきれていなかった」ということがあります。特に低濃度の溶存酸素測定が必要とされる場面では、測定ポイントの後工程の配管腐食を誘発したり、最終製品の品質に大きく影響を与えることから、サンプルの特性やプロセスの環境などを考慮し、確かな測定ができる機器を選定ください。
Orbisphereはアプリケーションに合わせて、コントローラー・センサー・パーツなど組み合わせることが可能です。
導入前にデモを実施し、検証することをお勧めします。専門知識を有したセールスエンジニアがお打合せの上、お客様にあった最適なシステムをご提案させていただきます。

まとめ
溶存酸素は、水質や製造プロセスの管理において欠かせない指標です。液体中の溶存酸素を測定し、適切な溶存酸素レベルを維持ことは、多くのアプリケーションにおいて重要です。正確な測定と適切な測定器選定により、品質の維持と効率的な運用が可能になります。
【最終更新日:2025年10月27日】溶存酸素の測定方法や用途別センサー選び方について最新情報を反映しました。
(高濃度溶存酸素計につきましては、総代理店である東亜ディーケーケー社でお取り扱いしています)

