近頃では、食品・飲料メーカーは、水・化学物質・エネルギーの使用量を最小限に抑え、二酸化炭素排出量を削減しながら、生産収率を最大化する必要性に迫られています。今回取り上げるテーマは、製品ロスの削減と最小化に関連しており、その結果として水の使用量が減り、必要な処理が少なくなり、エネルギーの使用量も減ったという事例です。最終的には、収益性や環境への影響を改善し、より持続可能性を高めていくことにつながっています。
オンラインTOC計 BioTector(バイオテクター) B7000Dairyは、
乳製品を扱う工場向けに特別に設計された測定器で
処理工程や廃水に含まれる乳製品の漏えいを即座に検知し、定量化できます
概要
多くの乳製品加工工場には、製品ロスを減らすことで、何百万ドル分もの収益改善のチャンスがあります。全有機炭素(TOC)の継続的なモニタリングも、この収益改善チャンスの一部です。乳製品向けにデザインされたオンラインTOC計によるモニタリングは、工場やプロセスラインの独立した監視役として機能し、乳製品工場における人員、プロセス、装置の日常を変えることができます。工場から排水として排出されるミルクを信頼性の高い正確なリアルタイムでモニタリングすることで、製品ロスを即座に定量化し、改善点を見つけ、損失の程度を大幅に削減することが可能です。
乳業の排水負荷を減らす初期段階での原動力とは、処理費用や課徴金の上昇への対応でした。しかし今日では、乳製品工場が経済的に最も打撃を受けるのは、排水される製品そのものの価値なのです。工場の総有機廃棄物量の90%以上は、乳糖、タンパク質、乳脂肪など、処理中に失われ排水溝に流れ込む、貴重な主要ミルク成分に由来しています。
乳業の経営陣は、排水への製品ロスが経済的にも環境的にも重要であることを認識しているものの、これらの実際の価値については、いまだに大変な過小評価がされています。
一般的な工場の場合 、500万ドル(約6億円)の製品価値の損失
国際乳業協会では、乳製品工場の「標準的な」製品ロスの数値を年率2~3%と推定しています。一見するとたいしたことではないように思えるかもしれませんが、この損失の程度がもたらす経済的な影響は、非常に大きなものです。例えば、平均的に2.5%の製品ロスがあると、「典型的な乳製品工場」では、製品価値の損失として年間500万ドル以上のコストがかかります(さらに、余分な排水処理コストに90万ドル近くかかります)。
乳製品加工工場や施設を運営する上で避けられないものもありますが、例えば、一般的な工場で製品ロスを15%削減するだけで、年間750,000ドル(約9000万円)以上の製品コスト削減、年間125,000ドル(約1億5千万円)以上の排水処理コスト削減、さらに排水を監視する地元自治体からの課徴金や罰金の削減につながります。
特に、典型的な乳製品の処理プラントでは、毎年何百万ポンドものBODが発生するため、コストがかかります。信頼性の高い正確な意オンラインTOC計を使用し製品ロスのレベルを低減することで、大幅な節約が可能になるのです。
乳固形分の損失は、各乳製品工場の稼働率、オペレーション、製品構成と貯蔵パラメータによって異なります。製品ロスを減らすために適切な調整や修正を行うには、工場のマネージャー、オペレーター、安全衛生管理者が、工場の排水負荷に関する正確な情報を、リアルタイムですぐに入手できる状況でなければなりません。そして、この重要な情報の欠如や不十分さが、多くの乳製品工場における今日の製品ロス削減プログラムの「アキレス腱」となっています。
従来通りの損失測定:成り行き任せの試み
水の使用量と、乳製品の廃棄物の量と濃度は、製品ロスの指標として利用できます。BOD5(生物学的酸素要求量)は、水に含まれる有機物を分解するのに必要な酸素量を示す指標です。乳業の廃棄物の流れに含まれる1ポンド(1ポンド=453.592g)のBOD5は、1.11ガロン(約4,200ml)のミルクの損失に相当します。COD(化学的酸素要求量)は、BOD5との相関関係があるため、関連する測定方法としてよく使用されます。
ラボの分析では、サンプルを採取してからラボデータが利用可能になるまでの時間が長いため(BOD5では5日、CODでは2時間)、最終排水を定期的または計画的に検査しても、収益に影響する過剰な廃棄物負荷の可能性の把握はできません。工場が、断続的で時間のかかるラボによる分析に頼ることは、製品ロスを減らすという点では、一般的に成り行き任せの努力となってしまいます。ラボでの分析に時間がかかるために、工場で発生する高負荷事故の原因を、簡単に特定することができないのです。
TOCの測定
今日、乳業工場の製品ロス削減計画の効果を高められるかは、オンライン計測器をいかに有効に活用できるかにかかっています。現場で実証されたオンライン計測器による全有機炭素(TOC)の継続的な測定は、ロスがいつ、どこで発生しているかを特定する上で、乳業にとって大きな一助となります。
TOCとは、試料中の溶存および未溶存の有機物に含まれる炭素量を示す指標です。TOCは、水中に存在する有機的に結合した炭素の合計であり、溶存物質や浮遊物質に結合しています。乳製品工場で失われたミルクのガロン数と、その時点で排水中のTOC量との間に直接的な関係があるため、TOC測定は、排水の流れに含まれる乳製品の量を特定するための最も費用対効果の高い、継続的かつ正確でタイムリーな測定であると広く考えられています。
TOCは、他のパラメータと比較して、費用対効果が高く、正確でタイムリーな排水計測であり、
リアルタイムでのモニタリングが可能であると考えられています。
オンラインTOC計Biotector(バイオテクター)B7000Dairy は、乳業業界向けに特別に開発されたもので、排水中のミルクの量を堅牢かつリアルタイムに監視することができます。この分析装置は、世界40カ国以上で1,000台以上の導入実績があります。今日、オンラインTOCモニタリングは、ネスレ、カーベリー、ダノン、レイクランド、マレー・グールドバーンなどの企業が運営する処理施設を含む、多くの主要乳製品加工企業で、製品ロスの大幅な削減に貢献しています。
乳製品工場でBiotectorを管理ツールとして使用することで、排水中の製品ロスを瞬時に表示し、定量化することができます。これにより、工場のマネージャーやマネジメントに重要な情報が提供され、より多くの情報に基にプロセスコントロールや事故対応が可能になります。
情報を知恵に変え、知恵を行動に移す
オンラインTOC計BioTector B7000Dairyには製品ロスの指標であるLPI™(Lost Product Index; 製品ロス指標)が分析装置に組み込まれています。この機能により、工場のマネージャーやオペレーターは、排水中のTOCの量と、その時点で工場で失われているミルクのガロン数とを、直接かつ正確に結びつけることができます。現場とマネジメントは、LPI™の数値を使用し、排水の流量を考慮の上、時間、シフト、曜日ごとの製品ロスの度合いを算出することが可能です。
マネジメント、工場のマネージャー、オペレーターは、LPI™モジュールと対応する「数値」を使用して、様々な活動、プロセス、機器、インシデントがどのように製品ロスの度合いに影響するかを確認することができます。生産部門、環境部門、廃水処理プラント(WWTP)部門は、同じ企業目標に向かって働いているにもかかわらず、それぞれが自分の部門の視点から数字を見ることができるため、これらの数字から恩恵を受けることができます。
信頼性の高いオンラインTOC計によるモニタリングが、マネジメントが削減プロセスに積極的な役割を果たすことで、大幅なコスト削減を実現することが可能です。日々の小さな節約が、1年間の運用で考えると、大きなコスト削減につながります。また、複数のBioTectorを設置して個々のプロセスの廃棄物の流れを監視すれば、信頼性の高い実用的な情報を元に、オペレーションの各部門のパフォーマンスを追跡することができます。これには配送業務も含まれます。例えば、トラックのドライバーが油断して、大量の製品をタンカーに残してしまうと、タンカーの洗浄時に排水溝に流されてしまいます。これは非常によくある問題であり、結果として製品ロスのレベルが高くなります。TOCモニタリングは、このような数値の上昇を即座に検出し、工場のマネージャー、オペレーターは非常に迅速に解決することができるのです。
業界の調査によると、正確で信頼性の高い継続的なTOC測定を行うことで、乳製品加工工場での製品ロスを15%以上削減できることがわかっています。
積極的な製品ロス削減のために、オンラインTOC計BioTector B7000Dairy は以下のユニークな組み合わせを提供します。
- リアルタイムでの排水の正確なTOC含有量
- 製品のTOC全体に対する、排水中に含まれるミルクの割合
- リアルタイムで失われるミルクの量
- ろ過していない排水の代表的なサンプルの割合
乳業のための堅牢な設計
乳製品は、プロセスストリームに含まれる油脂類(FOG)、塩類、微粒子のために、測定は非常に厳しい環境にあります。しかし、オンラインTOC計BioTector B7000Dairy は、乳製品加工アプリケーションにありがちな、過酷なサンプリングや測定条件がもたらす障害にもかかわらず、確実に性能を発揮します。
オンラインTOC計 BiotectorB7000Dairy
このオンラインTOC計には二段階酸化方式の技術が搭載され、これまでのTOC測定の限界の常識を払拭する、強力な酸化プロセスを採用しています。二段階酸化方式のセルフクリーニング機能により、ドリフトの原因となる蓄積物の問題を排除し、乳製品加工場でよく見られる難しいサンプルにも対応しています。また、ろ過を必要としないため、より高いサンプル精度が得られます。最大2mmの粒子に対応し(多くの従来技術で対応できるとされる粒子径の最大値の1,000倍)、代表的なサンプリングが可能です。
このオンラインTOC計は、ネットワーク等と接続可能です。情報が瞬時に得られることで、生産現場と下水処理担当者との連携が強化され、担当者間の説明責任を果たすことが可能です。
さらにこのBiotectorシリーズは、単独で使用することはもちろん、bus通信による信号のやりとりも可能です。
まとめ
原材料費の上昇に伴い、収益性が厳しくなり、競争が激化しています。コスト管理はこれまで以上に重要になります。プロセス排水は収益を工場からさらっていきます。
製品ロスの監視については、濁度、光学測定、カメラなど、さまざまな方法が採用されてきました。これらは製品のロスが発生していることを確認するのに便利なツールですが、ロスが発生しているときの正確な量を定量化することはできません。
オンラインTOC計Biotector B7000DairyでTOCを連続的に測定・監視することで、工場は排水中の製品ロスの割合を下げることができます。また、エネルギーと水の消費量を減らします。排水処理コストを節約します。工場を過負荷から守ります。規制対応へのリスクを減らします。そして最も重要なこと、本来なら失われるはずだった貴重な製品を取り戻すことができます。