大手化学メーカーのDOW社では、全世界の拠点にHachのTOC計(全有機炭素計)BioTectorを250台以上導入いただいています。ここでは主に、ドイツのシュパコウにある施設の事例をご紹介します。
概要
DOW社のTOC専門家チームは、TOC測定の商業的・運用上価値を熟知しています。
DOW社はサンプル中に、油脂、塩分、微粒子、グリースなど化学物質が存在するような困難なアプリケーションにおいても、BioTectorがオンラインTOC計として信頼性の高い正確なTOC測定を可能であると評価しました。
長年にわたり、DOW社はBioTectorの最大ユーザー様の一社です。DOW社内では、この装置をMET(Most Effective Technology:最も有効な技術)として標準化してきました。このことは、DOWチームのTOC計運用上のメリットに関する専門知識と、多様なアプリケーションで適切に機能するBioTector の湿式二段階酸化方式の技術力に対する信頼を浮き彫りにしています。
DOW社で活用しているBioTectorの関連アプリケーションには以下のものがあります。
1. ボイラー復水
2. 冷却水
3. 脱塩水
4. 最終排水
5. 飲用水
6. プロセス水
7. 雨水
8. 逆浸透水
9. 下水処理場の汚染水
DOW社拠点の一つ、シュコパウの施設(ドイツ)
ドイツ東部に位置するDOW社のシュパコウの施設には、4台のHach社製オンラインTOC計BioTectorが設置されています。もともとは1999年に設置され、2013年にアップグレードされました。
BioTector オンサイトアプリケーション
4台のBioTector B7000の設置状況をご紹介します。
1台目 および 2台目 – 冷却水と雨水
各オンラインTOC計は2つのストリーム/チャンネルを使用します。 TOCデータは、オペレーションチームがプロセス機器の故障項目を示したり、放流や水の処理に関する決定を下したり、政府の規制に準拠しているかどうかを迅速に確認するために使用されます。 TOCレベルが30ppmを超える場合は、水を貯水池に分散し、容量がある場合には廃水処理プラントに処理を依頼することになります。
3台目- 廃水処理プラント 流入
BioTector B7000は、処理プラントに流入する廃水を監視します。また、廃水中の塩分負荷(最大2000 mg/L Cl⁻ および600 mg/L SO₄²⁻ )にも、長年にわたって安定した性能を発揮しています。TOC測定データを利用することで負荷を安定化させ、必要に応じて水を希釈し容量を最適化して、廃水処理プラントでの円滑な操業を確保することができます。
4台目– 排水処理プラント最終放流
シュコパウの拠点はCOD規制されており、DOW社はTOCを介してここをオンラインで管理することが許可されています。ここでの管理限界は25ppmです。
このプラントは地元のサーレ川に排水しています。この時点でのTOC測定値は綿密にモニターされており、測定値のスパイクや汚染があれば排水バルブが閉じられ、処理場に戻されます。この最終チェックにより、政府の規制が遵守され、DOW社が罰則や悪評を受けないことが保証されます。BioTectorは、長年にわたりラボでのバリデーションテストと比較し、97%以上の非常に高い精度レベルで継続的に動作することが証明されています。最終的な排出を正しく規制することは、経済的にも大きなメリットがあります。
代替技術
DOW社では、頻繁に起こるTOC計の詰まりによる、継続的で著しいメンテナンス上の問題や、ダウンタイムが発生していました。これらの詰まりの原因は廃水に含まれる塩分や石灰でした。長年にわたり、多くの代替分析技術を試験してきた結果、BioTectorは1999年にこの拠点で試験され、独自の湿式二段階酸化方式の技術や自動洗浄機能が一貫してその性能を発揮しました。BioTectorの稼働率は99.86%で、M CERTS*認証を取得しています。(*Monitoring Certification Scheme:1998 年に英国環境庁が発足させた「産業プロセスからの大気汚染物質排出を規定する機器に関する監視認証スキーム」)
DOW社のシニア分析スペシャリストであるBach氏は、「BioTectorは断然に優位性がありました。BioTectorには、単なる製品ではなく、ソリューションがありました。」と述べています。
優れたメンテナンス
続けてBach氏は「BioTectorはシュコパウの拠点で優れたメンテナンス実績を誇っています」と述べています。
BioTectorは 6ヶ月間の定期点検と毎月の試薬交換を行っています。併せて検量線も、予防措置として月に一度チェックしています。このメンテナンスにより、ランニングコストを削減しやすくなります。現場のBioTector は、14年間の安定稼働の後、最近アップグレードされました。
信頼の精度
DOW社のチームはBioTectorの測定値を信頼しており、その情報は確信を持って廃水処理プラント運用上の意思決定に利用されています。BioTectorB7000の提供する情報を用いてDCS(分散制御システム)を使用して管理情報を提供します。この情報により、安定した生産レベル、予測可能な廃水負荷、最適な廃水処理プラント運営が可能になります。
TOCラボ試験も実施され、日常の複合サンプルを使用してBioTector B7000のデータをさらに検証しています。DOW EH&S社分析サポートのDr. Katrin Heinrichは、その精度に満足しており、「システムを信頼しています」と述べています。
結論
歴史的にオンラインTOC技術は問題を抱えており、TOC測定の真価と意義を損なってきました。しかしDOW社は、HachのTOC計 BioTectorが90年代に市場に導入されたとき、その価値を理解し、高濃度排水の測定も可能な湿式二段階酸化方式をいち早く採用しました。そしてその後も商業的、運用的、規制的、環境的なメリットを享受すべく、ますます多様なアプリケーションにおいて使用され続けています。
導入企業様について
DOW社は、アメリカ合衆国に本社を置く大手化学メーカーです。30カ国以上で約190の製造拠点を運営しており、最近ではエチオピア、ナイジェリア、モロッコにオフィスを開設したアフリカなど、世界で最も急速に成長している地域にも進出を続けています。
*DOW社 シニア分析スペシャリストのSteffen Bach氏とDOW EH&S社分析サポートのDr. Katrin Heinrichに感謝の意を表します。