Hachジャーナル

【海外事例】ボイラシステムの安定的な運転とコスト削減に大きく貢献する オンラインTOC計「バイオテクター」

boiler

オンラインTOC計「BioTector(バイオテクター)」の海外での活用方法の1つに、ボイラシステムでの凝集水のTOC測定があります。主に石油精製、石油化学、トウモロコシの湿式製粉工場で役立てられています。凝集水は、非常に高い温度を必要とするプロセスに不可欠です。ボイラから流出した蒸気は、一連の熱交換器を通過してプロセス液を加熱します。この工程においては、有機物による汚染が復水の戻り系に混入する可能性があるため、注意が必要です。

よくある課題

時折、復水システムにプロセス液が何等かの要因で入り込んでしまうことがあり、ほとんどの場合、熱交換器で起こっています。ここで汚染された復水がボイラに戻されると、効率が低下はおろか、そのまま運転し続けることにより、ボイラの故障につながるなど、様々な問題が発生する可能性があります。

    汚染された復水の処理には、以下のようなコストがかかります。

  • 破損が発生した際の、プロセス液の損失または汚染のコスト
  • 前処理済みボイラ水の損失コスト
  • 補給水の供給コスト
  • 補給水を加熱するためのボイラ燃料(石炭、バイオ燃料、ガス)のコスト
  • 補給水の化学処理コスト
  • 転換・汚染された復水の廃棄物処理コスト

 

破損が検出された場合、ボイラのオペレーターは通常、汚染された可能性のある復水を下水道に排出し、ボイラから遠ざけることになります。ボイラシステムに入ってきた補給水は、化学的に処理された後、必要とされる蒸気温度まで加熱する必要があります。これには、復水の温度を維持するよりもはるかに多くのエネルギーを要します。水と燃料の使用量の増加は、運転コストに最も大きな影響を与えます。

クリーンな復水は、脱ミネラル化、脱泡、脱イオン化された処理水です。使用する水は純水でなければなりません。つまり、システム内に浮遊物、有機物、鉱物が存在してはならないのです。汚染された凝縮水がボイラを通過して蒸気に変換されると、固形物が残ってチューブに付着し、チューブを絶縁し始めます。このような状況を防ぐために、これまで、多くの現場のオペレーターは汚染の可能性を最小限に抑えたり、プロセスを減速させたりするために以下のような方法を実施しています。

  • ボイラへの汚染侵入を防ぐために、復水の大部分を排水に回す
  • 定期的にボイラをブローダウン(復水の大部分を空にする)し、ボイラ内に留まった固形物を除去する

 

これらはいずれも、汚染の問題に対処するためには、大変非効率な方法です。復水1ガロンにつき1ガロンの補給水を必要とする上、これを化学的に処理し、必要な蒸気温度まで加熱してボイラで使用できるようにする必要があるからです。

循環流動層ボイラ

循環流動層ボイラ

「バイオテクター」のソリューション

オンラインTOC計「バイオテクター」は、システムの通常運転を中断することなく、ボイラ保護プログラムに効果的に組み込むことが可能です。復水の品質を継続的に監視することで、運転コストだけでなく、想定外のメンテナンス作業を大幅に削減できます。復水の品質(通常100ppb~5ppm)を常時監視しておくことで、本来は良好な状態にある復水を排出する必要がなくなるのです。

また、最終的に自治体で処理する必要がある下水道への水の量を減らすことで、規制違反等のリスクを回避することもできます。そして最大のコスト削減効果は、プロセスで利用可能な温度まで水を加熱する必要がなくなることによるエネルギーや燃料のコストです。

「バイオテクター」は、制御システムに信号を送信して、異常を通知する機能を備えています。これにより、オペレーターは汚染した復水を迂回させ、ボイラの損傷を防ぐことができます。復水システムは、汚染が除去されことで通常運転をすることができます。

よくある設置例

「バイオテクター」は、シンプルに運用することが可能です。運用状況により以下のような設置例があります。

  • サンプルラインに、冷却ループを設置

装置に流入するサンプル温度が40度以下である必要があるため、サンプルが高温の場合には、測定の前段階に冷却ループを設置します。

  • システムの規模に応じて複数ポイントでの計測

規模によって、複数の測定ポイントが必要となる場合があります。
通常、給水タンクへの戻りライン、給水タンクからボイラへの戻りライン、熱交換器から戻るすべての収集ポイントに測定ポイントがあります。

オンラインTOC計 BioTectorの設置ポイント

オンラインTOC計バイオテクターの設置ポイント

オンラインTOC計バイオテクターの設置ポイント

酸素濃縮器付きTOC計バイオテクター

酸素濃縮器付きTOC計バイオテクター

「バイオテクター」による、ボイラの凝集水管理で大幅なコスト削減

米国シカゴ郊外のCorn Products社(現Ingredion社)では、新しく設置するTOC計により、ボイラ凝集水を確実に監視するべく、現状で抱えていた課題を検討していました。既存の技術は、凝縮水のTOCレベルを過剰に報告する傾向があり信頼性が低く、本来良好な状態にある凝縮水を排水してしまう原因となっていました。

そこでHachのTOC計「バイオテクター」をテスト導入してみたところ、すぐに凝集水の回収レベルが、損益分岐点を大きく上回る結果が出ました。このことから、工場内オンラインTOCシステムのうち、8台をアップグレードすることになりました。

以下は、Corn Products社状況の内訳と、TOC計バイオテクターの導入コストに対して、どの程度のコスト削減ができたかを示したものです。

BioTector導入前

・2年以上前に、他社製TOC計を8台、新しいボイラと一緒に設置した。
・全サポートシステムを含む設置費用:約9700万ドル(約135億円)
(100万ポンド/hの100MWの流動床ボイラにて。これは、イリノイ州の高二酸化硫黄を年間2,600万ドル分、燃焼する量に相当。)
・既設の装置が何らかの理由(再校正、サービス、故障)で停止した場合には、この施設ではボイラを損傷するリスクよりも、凝縮水を下水道に流すことを選択していた。
・ダウンタイムが頻発し、測定が正確でなかったため、平均回収率は45%だった。
(1時間あたりの復水回収率45%=約274tの損失。これは、1時間あたり約1400ドルの再利用可能な凝縮水がドレンに送られることに相当。)
※製品の凝縮水コストは、1000gal(約3.7Kl)あたり$19.91(約2,500円)。なお、業界平均は$15.00(約1,800円)

BioTector導入後

・凝縮水の平均回収率は95%に改善した。
・下水道料金*: 1000gal(約3.7Kl)あたり、$1.65(約206円)  $217(約27,125円) – 1.1Mlb(約498t) 凝集水/h
・水道料金: 1000gal(約3.7Kl)あたり、$3.2(約400円)  $422(約52,750円) – 1.1Mlb(約498t) 凝集水/h
・設備改修費: 1000gal(約3.7Kl)あたり、$1.55(約193円)  $204(約25,500円) – 1.1Mlb(約498t) 凝集水/h
・燃料費**: 8335lbsあたり、$13.54(約1690円)
* 下水道はデュページ郡とクック郡のデータに基づく。
**燃料費はイリノイ州のスポット価格(ショートトン)に基づく。

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