Greencore Foods社は食品加工業界の大手企業です。グループの食料品部門は、調理用ソース、ピクルス、ディップ、ソフトドリンクなど、800種類の瓶詰製品群を年間2億個生産しています。英国ヨーク近郊のセルビーにある工場で、食品市場におけるメインブランドから小売店向けブランドまで幅広く取り扱っています。
過去10年間に多額の投資により、現在では英国で最も近代的で衛生的、かつ効率的な生産設備を誇っており、権威あるAIB認定(食品安全システム認証の国際規格)を受け「Superior」カテゴリーに位置づけられています。
セルビー工場は、排水の品質を監視・管理し、排水処理費用を最小限に抑えるため、専用の排水処理施設を備えて、継続的に改善を行っています。
Greencore社の食品加工工場
「BioTectorの導入は、環境庁から課された新たな規制値を満たすための重要な投資となりました。このオンラインTOC計のおかげで、高濃度の廃水をバッファータンクへ回すことができ、排水処理設備(ETP:Effluent Treatment Plant)への負荷がよりスムーズになり、また嫌気性消化槽でのCOD除去の効率を改善することができました。
もう一つのメリットは、BioTectorから生産現場へのリアルタイムなフィードバック情報が得られることで、高いCOD(排水負荷)を発生させる恐れのある箇所での作業に注力し、COD発生の削減や管理をより適切に行えるようになったことです。この設備投資は、法律の遵守を前提に承認されたものですが、これが実現に役立っています」
Greencore Foods社 環境マネージャー David Murtagh 氏 (英国セルビー)
飛躍的な改善
「2010年にハックのオンラインTOC計BioTectorB7000を導入したことにより、工場の排水処理プロセスを改善する能力が飛躍的に向上し、流入水の変化により適切に対応することが可能となりました。
BioTectorB7000は、厳しいプロセス環境下で継続的にその機能を発揮するために、湿式二段階酸化方式を使用し、加熱することなく有機物を確実に分解します」
Patsy Rigby博士(HACH LANGE 米国)
食品工場からの排水には、無機塩類や有機物が含まれています。製品切り替えのための設備洗浄の際に、タンクやラインを強く洗浄することもあり、その一部が排水処理設備に流れ込みます。設備に有機物が過剰に蓄積されると、処理プロセスの効率に悪影響を及ぼします。廃棄物が必要な水準で処理されないと、イングランド・ウェールズ環境庁が設定した河川排出基準を遵守することができなくなります。
セルビー工場の排水処理施設は、外部の排水設備管理会社によるアウトソーシングによって管理されています。施設への流入水はTOCの分析により、濃度が管理されています。
バイオテクターB7000導入前の状況
Greencore社 環境マネージャーのDavid Murtaghs氏はこのように説明しています。
「以前は、現場の排水溝から手作業でサンプルを採取し、別の場所にあるラボに運んでいました。ラボでは少人数のチームで、運ばれたサンプルのさまざまな分析を行っていましたが、これにはかなりの手間がかかり、完了まで時間がかかっていました。
最先端のラボ技術をもってしても、実用面ではまだ時間がかかりすぎるため、プロセスに対する迅速なフィードバックが行えませんでした。全体として、これは21世紀的なものではなく、排水処理設備を制御したり、プロセスの問題を早期に警告したりするための直接的な情報源にはなり得なかったのです。そのため、代替案を模索する必要がありました。
さらに、環境庁による河川への放流規制の強化が迫っていたことも大きな要因でした。排水処理設備をより効率的に管理し、TOCの発生源である排水処理プロセスへのフィードバックを得る手段として、より頻繁に、より詳細に、迅速かつ正確で信頼できる廃水流入水のTOC値データを必要としていたのです。オンラインTOC計は、より汚れが少なく微粒子のない排水サンプルには有効ですが、固形物、油脂、グリース、そして様々なTOCを含む未処理の廃水流入水には大きな課題があり、過去の悪い経験から慎重になっていました。また、繊細で細い配管やバルブにとっては大きな負担となり、装置の故障の原因となることもありました。」
バイオテクターB7000導入前の分析方法
TOC/COD/BODの従来の分析手法は、UV照射または触媒燃焼による強力な分解をベースとしたラボ装置として開発されました。これらは、サンプルの前処理(例えばろ過など)がコントロール可能なラボ内でのサンプリングの優れた基準を提供する一方で、実際のプロセス環境ではうまく機能しないことが多々あります。
排水には様々な課題があります。湿式UV酸化方式では、0.1%程度の塩分負荷で過硫酸塩分解作用が阻害され、また、汚濁したサンプルは湿式UV酸化方式のカラムにスケーリングを引き起こし、有機物除去が難しく、カラム交換による過度のメンテナンスが必要です。また、燃焼式では塩分濃度が高くなると、装置の目詰まりや触媒の寿命が短くなり、メンテナンスが必要になります。サンプル量は一般的に10μl以下に制限され、チューブやマルチポートバルブの粒子詰まりを防ぐためにサンプルの前濾過が必要で、粒子径は200μm以下に制限されます。プロセス環境では、塩類や微粒子がチューブやガラス燃焼管を詰まらせるため、2~3日ごとに装置の再校正が必要になることがあります。
BioTector(バイオテクター)B7000のソリューション
BioTectorB7000は、厳しいプロセス環境においても連続的にその機能を発揮させるため、湿式二段階酸化方式を採用しています。熱による制約なく有機物を強力に分解することが可能です。これは、アルカリ試薬にオゾンを反応させることで実現します。
酸化力の高いヒドロキシラジカルが生成され、二段階の高度な酸化処理により、従来の技術では困難であった、シリンジによる希釈を必要としない大量のサンプルの処理が可能になります。
また、反応槽とサンプルチューブのセルフクリーニング機能により、サンプルの詰まりや付着を防ぎ、希釈せずに最大30%の塩分と最大12%のカルシウムを酸化させることが可能です。塩の結晶化や閉塞の原因となるセラミック等の耐熱部品を使用しないバイオテクターは、塩分の多いサンプルに適しています。
外部の排水設備管理会社(以下、管理会社)の継続的改善を担当するマネージャーは、「オンラインTOC計の利用に関するこれまでの懸念は、いずれも現実的な方法で解決されました」と説明します。
「BioTectorは、処理施設に送られる未処理の廃液からサンプルを採取します。しかし、サンプルをできるだけ原水にする必要があったため、サンプルラインにインラインフィルターは設置しませんでした。砂や土を多く含むこの土地特有の排水に対応するため、サンプリングの方法はハックのBioTector専門チームによって非常に慎重に設計されました。
BioTectorからのデータは、管理会社の排水設備制御システムとGreencore社のデータ収集システムの両方に統合されました。管理会社は、この分析結果をもとに、排水処理施設に送られる水の濃度を制御しています。事前に設定されたレベルを超える負荷が発生した場合は、敷地内の非常用タンクに迂回させます。この制御により、排水処理プラントの性能が大幅に改善されました。
お客様のニーズに合わせてカスタマイズできるBioTector B7000は、使いやすく、運用コストの削減、ダウンタイムの回避、真のリアルタイム制御のための優れた分析結果を提供することが可能になります。」
M.H氏(排水設備管理会社 継続的改善担当マネージャー)
■ 協力:
Patsy Rigby 博士(HACH LANGE UK)
David Murtagh 氏(Greencore Foods社 環境マネージャー)
M.H氏(排水設備管理会社 継続的改善担当マネージャー)