Hachジャーナル

【アプリケーション事例】冷却水循環システムのTOCとVOCをモニタリング ~ダウンタイムと設備破損を回避し、運転効率を最大化

クーリングタワー(冷却塔)image

課題

クーリングタワー(冷却塔)の効率は、水の管理に大きく左右されます。健全な冷却水循環システムを維持するためには、規制上の義務やメンテナンスの問題など、多くの課題があります。特に漏水は、腐食、沈殿、スケーリングを引き起こし、機器の損傷、環境不適合、安全上の危険につながる可能性があります。

ソリューション

水の循環システムにおける早期の有機物汚染ならびにVOC(揮発性有機化合物)の放出量のモニタリングは、システムの損傷を防ぐための最良の方法です。システム損傷が起こる前にすべての有機汚染物質を検出、識別、測定するオンラインTOC計BioTector(バイオテクター)B3500cは、冷却水アプリケーションに最適なソリューションです。

ベネフィット

B3500cは、低濃度の有機汚染物質を含む水を、高精度で信頼性高くオンライン分析します。B3500cは高精度で、分析時間が短く、メンテナンスの頻度が低く、電力と薬品の使用量を最小限に抑えます。また、低コストで短期間のうちに費用対効果を上げることができます。


背景

化学工場、製油所、発電所、紙パルプ工場など、多くの工場では、熱交換器からの熱伝達のためにタンクを含む冷却システムが組み込まれています。

熱交換器とクーリングタワー

熱交換器は、蒸気(プロセス液)とグリコール(サーマル液)のような2つの液体間の熱伝達を可能にするもので、2つの液体が混合するのを防ぐように分離されています。熱交換器は、クーリングタワーのように、プロセス流路から熱を除去するために使用されます。
クーリングタワーは、水流を低温に冷却し、そのプロセス流を熱交換器に通してプロセスから熱を奪うことで、大気中に熱を放出します。
このプロセスがうまく機能しているうちは、システムにはほとんど、あるいはまったく問題がありません。しかし、システム内で問題が発生した場合は、多大なコストとなる可能性があります。冷却水の監視エリアは、遠隔地やアクセスしにくい場所にあることが多いので、最小限の注意を払うだけで済むモニタリング装置が最適です。

熱交換器とクーリングタワーで想定される問題点

プロセスにおける有機物の急激な増加は、システムの不具合につながります。これは、シール、ガスケット、チューブが破損し、プロセス液とサーマル液が混合することで発生します。このタイプのシステム障害は、次のような問題につながるまで、発見するのが困難な場合があります。

・ 製品の損失
・ 水質の低下
・ クーリングタワーの汚れ、スケーリング、蓄積による冷却効率の低下
・ クーリングタワーからのVOCまたは有機物の放出による環境コンプライアンス違反と罰金の可能性

ひとたび問題が発生すると、その被害は甚大なものになる可能性があります。多くの工場では、クーリングタワー内の有機物汚染の兆候や、VOCの排出がないかをモニタリングしていますが、一般的に使用されている技術の多くは、プロセスにおける有機物の急激な増加が原因で、深刻な事態が発生するまで、その潜在的な問題を検知することができません。

冷却水アプリケーション

冷却水アプリケーション図解

冷却水分析の一般的な方法と課題

問題を検出する一般的な方法として、水素炎イオン化検出器(FID:FlameIonization Detector、ガスクロマトグラフィーにて利用される標準的な検出器。ほとんどの有機化合物の検出が可能)、水中油型(OiW)分析器、光学式センサー、UV/過流酸塩システム、燃焼式TOC計、赤外線(IR)イメージングなどがあります。

FIDはシンプルな技術を使用していますが、サンプルチューブ内での微生物の繁殖など、サンプル採取に問題があることが知られています。また、この方法では、頻繁にパイロットランプの点火を行い、正しく動作することを確かめる必要があります。

OiW分析装置や光学式センサーは、帯電の影響を受けやすく、ドリフトする可能性があり、検出できる化合物に制限があります。

UV/過流酸塩システムは、冷却水アプリケーションで一般的に使用されています。しかし、これらのシステムは、酸化しにくい化合物の大部分を分解する能力を持たず、VOC測定を行うことができません。また、ドリフトしやすく、頻繁な校正が必要です。

燃焼式TOC計は、サンプル注入量が少ないため、シグナルノイズ比が制限され、低レベルでの精度が悪くなるため、サブppmの低レベルでは信頼性のある測定ができません。また、塩分環境での蓄積に敏感で、頻繁な校正が必要です。同様に、IRイメージングは、VOCが液体から抜け出し、ガス状になってからしか検出できないため、健康上のリスクや、高濃度の状況では火災の危険性があるなどの課題があります。FIDとIRのどちらの方法も、プロセスの停止につながる可能性があります。

BioTectorの分析方法

BioTector B3500cは、独自の湿式二段階酸化方式(TSAO)により、全有機炭素(TOC)、幅広い有機物、揮発性有機化合物(VOC)を測定する装置です。クーリングタワー水と熱交換器の有機物による劣化の測定に最適です。冷却水アプリケーションにおける、B3500cの標準的なシステム構成は2つあります。はじめの選択肢は、2つのサンプリングポイントを有する1つのユニットを設置することです。また、大規模なプロセスや施設では、シングルまたはマルチ測定ポイントの2台の分析装置を使用する構成が必要になる場合があります。一般的には、1台のTOC計がクーリングタワー流入口、切替弁の前に設置し、もう1台はプロセス領域で異常が発生した場所を特定するために、熱交換器の入り口に設置します。

測定ポイントを熱交換器の入り口に設置することで、汚濁した水の流れをクーリングタワーから遠ざけるための時間を確保し、早期発見と換気前メンテナンスのためのプロセスを確立することが可能となります。

BioTectorのソリューション

BioTector B3500cが行うマルチパラメーター分析は、TOCとVOCの両方の汚染物質が水系に流入する可能性がある熱交換器や冷却水アプリケーションで非常に有用です。
VOCシステムとして構成されたB3500cでは、最短6分のサイクルでTOCとVOCの両方のパラメーターの設定が可能です。このシステムには、プログラムされたパラメーター結果に対して、各分析サイクルの終了時に送信される標準アラーム信号が含まれています。総炭素量が多い場合、アラームポイントにより、総炭素量の増加の原因がどこにあるのかを特定できます。有機物や無機物の濃度が大きく変動するような環境でも、BioTectorは正確にサンプルを測定できます。
B3500cは、標準的なアラーム信号に加えて、測定開始から約3分以内にサンプル中の高濃度炭素を検出すると、高速でアラームを発する予測型CO₂アラーム機能を搭載しています(アプリケーションにより利用可能)。このCO₂予測アラーム機能は、BioTectorのソフトウェアで起動でき、総炭素量やTOC値が異常に高い場合に、非常に早い段階で警告を発することができます。

BioTectorB3500c_装置

BioTector(バイオテクター)3500c

メリット

B3500cは、2つの流路を同時にモニタリングできるコンパクトで効率的な分析装置で、2台目の分析装置にかかる費用と運用コストの削減が可能になります。試薬の補充は、従来型のTOC、VOC計測技術で一般的な隔週ではなく、6ヶ月に一度です。また、最大10~12mLという大容量のサンプル注入に対応し、最大限のシグナル対ノイズ比を得ることが可能です。B3500cは高精度と正確さ、そして圧倒的な再現性を実現します。
99.86%の稼働率を誇るB3500cは、メンテナンスも最低限で運用可能です。6か月に一度のメンテナンスを推奨しており、その期間中に校正や継続メンテナンスの必要はありません。
電力使用量、薬品使用量、廃棄物を削減することで、B3500cはトータルコストの低減を可能にします。継続的なオンラインモニタリングにより、早期に漏えいを検出し、コンプライアンス上のペナルティ、製品の損失、ダウンタイムを削減し、早期の費用対効果を実現します。
B3500cは冷却水アプリケーションの標準的なソリューションですが、独自のニーズや要件に対応するための他のモデルもご用意しています。

まとめ

工場における冷却水循環システムは、プロセスの健全性を保つために不可欠です。冷却水プロセスでは、プロセス中の有機物の急激な増加が一般的な問題であり、高価な修理や想定外の操業停止につながることがあります。従来のモニタリング方法では、サンプルろ過の必要性、長時間のサイクルタイム、メンテナンスの必要性などの制約があり、システムにダメージが生じるまで問題を特定できないことがよくあります。
シール漏れやチューブの穴あきなど、一見単純な問題でも、機器の損傷、効率の低下、法令違反、さらにはプロセスの停止など、重大な問題につながることがあります。BioTector B3500cは、問題の早期発見と特定を実現し、お客様の深刻な問題を未然に防ぐようサポートします。

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