課題
ある大手ビールメーカーでは、年間のビール生産量が増加するにつれて、メンテナンスのための適切な時間枠を確保することが難しくなっていました。
ソリューション
ハックの高精度光学式センサーを麦汁ラインに設置し、隔膜式センサーと比較するために、並べて12か月間テストを実施したところ、非常に優れた性能を発揮しました。
ベネフィット
高精度インライン溶存酸素(DO)計は、サービスおよびメンテナンスの頻度を大きく減少させました。蛍光スポット自体の交換は年に1回、校正は年に12回から2回になりました。
背景
この大手ビールメーカーは、醸造生産量を年間350万ヘクトリットルから550万ヘクトリットルへと、約200万ヘクトリットル(約170万樽)の増産を検討していました。24時間稼動しているこのビール工場は、同社の醸造ネットワークにおいて重要な生産拠点であり、この投資により、同社ブランドに対する顧客の強い需要に引き続き応えられるようになりました。
麦汁の管理
発酵を促進するために、麦汁ラインには純酸素または空気を注入します。これは酵母の呼吸を促すためではなく、ピッチング後、酵母は急速に酸素を吸収し、膜の生合成に使用します。酸素は酵母細胞の成長を早め、細胞密度を高くすることができます。しかし、溶存酸素濃度をラガーで20ppmにコントロールすることで、発酵のスピードは適正な速度で進みます。発酵が長引くと生産が遅れ、短いと風味に影響が出てしまいます。
麦汁の測定
酵母の過剰生産は、使用済み酵母によるビールの過剰な損失が明らかに望ましくないため、醸造業者にとってコスト高となります。逆に、初期の酸素不足は発酵不良を招き、酵母細胞内のアセチルコエンザイムAを増加させる可能性があります。その結果、ビール中のエステルが増加し、その他の好ましくない異臭が発生する可能性があります。
麦汁の酸素化不足による影響
・発酵の停滞
・発酵不良
・アセチルコエンザイムAの蓄積
・酵母の細胞壁合成はアセチルコエンザイムAから始まる
・脂質の適切な生成には酸素が必要
・O₂が少ないと、エステル形成が促進される
・H₂Sの増加
麦汁の過酸化による影響
・高温発酵
・酵母の過剰な増殖
・栄養不足による酵母の餓死
・好ましくない風味の発生
酸素添加の目的
ビールの風味は発酵中に発生することがあります。
・酵母の健全性のために最適な酸素濃度を達成する
・できるだけ少ないガス(O₂または空気)を使用する
・ガスは溶液の中にとどめておく
・発泡を最小限に抑える
・測定点の検証
解決策と改善点
隔膜式センサーから光学式DOセンサーに移行した主な目的は、再校正の頻度とその作業にかかる時間の両方を削減することでした。センサーの作業を行うには、生産を停止する必要があり、ほとんどのラインが加圧されているので、必要な認可を得るのにさまざまな手続きが必要でした。
生産が遅れるとコストがかさみ、生産の隙間を見つけて作業を行うのが一般的でした。
ハックの光学式センサーの測定原理
光学式センサーの「スポット」にはルミノフォアと呼ばれる発光物質が塗布されており、内蔵LEDからの青色光で励起され、緩和されると赤色光を発します。この発光は、溶存酸素量に比例します。発光は、最大強度と減衰時間の両方で測定されます。センサーの精度を維持するため、読み取り前に内蔵の赤色LEDで基準測定が行われます。
励起光を変調することにより、減衰時間は変調された蛍光信号の位相シフトに変換されます。これは、隔膜式センサーとは対照的に、光学式センサーの精度が経年変化で影響を受けないことを意味します。
そのため、隔膜式センサーは通常1~3カ月ごとに頻繁な点検と再校正が必要となりますが、光学式センサーはわずか数分で済む6カ月間の校正と、年に1回のスポット交換だけで完了します。また、光学式センサーは隔膜式センサーよりも応答速度が速く、生産の遅れを最小限に抑えるための極めて重要な要素になります。
高レンジと低レンジの溶存酸素測定
ビール中の溶存酸素は10億分の1、通常は100ppbまで測定されますが、これはハックの低レンジ光学式センサー「M1100-L」の能力の範囲内です。また、そのポータブル版(Orbisphere 3100)もオンライン測定を補完するために使用されています。高レンジ光学式センサー「M1100-H」は0~40ppmのレンジを持ち、麦汁アプリケーションに理想的です。
このビール工場では、何年も前からインラインの低レンジ光学式センサーを採用していたため、品質保証と品質管理のスタッフはすでに光学技術に信頼を置いていただいていました。2014年に導入した新たな高レンジ光学式センサーでも問題は発生せず、極めて良好な性能を発揮しました。また、隔膜式センサーでラインを監視していたため、センサーの長期的な性能も確認できました。
結果
12ヶ月の間に、このビール工場では1週間に1回のプロセスクリーニングで約1,344回の醸造を完了しました。その後、このラインの年間生産量は2,200回に増産しました。高レンジ光学式センサーの性能は彼らの要求を満たしており、その結果、最近さらに2つの同センサーを導入されました。
まとめ
このビール工場では、光学式センサーの効率と安定性の向上を痛感しています。隔膜式センサーは、すべてのラインで年間12回の再校正が必要であり、管理・運用上の負担が大きく、生産レベルが上がるにつれ、適切な時間帯を確保することが難しくなってきました。
一方、低レンジ光学式センサーのスポットは年1回交換・校正されており、高レンジセンサーも間隔が年2回になること以外は同様に校正を行う予定です。毎年計画されるメンテナンスのための工場停止は、通常1月の最も需要の少ない時期なので、光学式センサーの交換と再校正を行うには理想的な時期です。
◆ 関連製品
Orbisphere M1100(飲料用センサー)
Orbisphere 410(コントローラー)
Orbisphere3100 (卓上ポータブル酸素計)