課題
排水処理における有機物負荷の除去を効果的に管理するためには、実際の有機物負荷に応じてプロセスを調整できるよう、継続的な有機物モニタリングが必要です。モニタリングから得られる情報は、処理を終了するタイミングを決定するのに重要です。
ソリューション
オンラインTOC(全有機炭素)計 B7000は、浄化プロセスのさまざまな段階で正確なTOCの値を提供し、処理状況を正確に把握することで、リアルタイムでの意思決定を可能にしています。
メリット
複数流路でTOCの連続値が得られることで、プロセスを自動制御することが可能となり、ネクストアクションを下すことができるようになります。
背景
Destilerías Muñoz Gálvez(デスティレリアス・ムニョス・ガルベス)社は、スペインの芳香族系化学製品、エッセンシャルオイル、フレグランス、フレーバーの製造に特化した企業です。同社の成長戦略には、処理水の再利用を可能にする新しい産業用排水処理施設(図1)の立ち上げが含まれています。同社は、有機物を減らした排水を再利用する「欧州水再利用プロジェクト」(図2)に参画しています。そのため、排水処理において最善とされる技術(BAT:Best Available Technology、利用可能な最善の手法*¹)を複数適用しています。
同社の新施設は、限外ろ過、ナノろ過、UV、有機物負荷低減のためのEDI(電気脱イオン処理)の4つの処理ラインを備えており、水の再利用が可能です。PLC*²とSCADA*³システムがプロセス制御を行い、各処理ラインの自動制御を行うとともに、プロセスデータを連続的に記録し、意思決定に役立てています。いずれの場合も、処理前の有機物負荷の初期レベル、各分析中の有機物負荷の分解過程、最終的な到達値を知ることが必要です。
排水処理における有機物除去を効果的に管理するためには、実際の有機物負荷に応じてプロセスを調整できるよう、継続的に有機物を監視することが必要です。この情報は、処理を終了するタイミングを決定する上で非常に重要です。
*¹EUにおけるBATの定義について(出典:環境省ホームページ)
利用可能な最善の手法:(産業)活動の発展およびその操業方法の最も効果的および高度な段階で、環境全体に影響を与える排出物の防止(それが困難な場合は削減)のため特定の手法に関して、原則として排出物制限値を設けるに際しての実践的適用性を示したものを意味する。
*²PLC: Programmable Logic Controller プログラマブル論理制御装置
*³SCADA: Supervisory Control and Data Acquisition 監視制御とデータ収集
解決策と改善策
同社は、前述の4つの処理ラインを連続的に監視するために、セルフクリーニング機能があり、4つのサンプル流路を備えたオンラインTOC計BioTector(バイオテクター)B7000(図3)を導入しました。BioTectorは、内部のPROFIBUS DPネットワークに接続され、SCADAシステムがその情報を受信し判断することで、処理プロセスの効率的な制御を可能にしています。
BioTectorは、TOC濃度が高いサンプルから非常に低いサンプルまで、各処理ラインの有機物負荷の推移を正確にモニターすることが可能です。BioTector(バイオテクター)の強力な湿式二段階酸化方式は、サンプルに含まれる複雑な有機化合物の酸化を確実なものとします。さらに、セルフクリーニング機能を備えているため、1つのサンプル流路から別のサンプル流路への汚染のリスクなしに、1台の装置で広範囲のサンプルを測定することが可能です。
TOCの測定は、限外ろ過(RO)膜により前処理された水の電気脱イオン処理中の有機物の除去動態を記録するために使用されました。図4に示す値は、この有機物の除去速度を示しており、SCADAが電解酸化の運転負荷を有機物の瞬間的な濃度に適合させることを可能にしています。
まとめ
オンラインTOC計BioTector(バイオテクター)は、処理プロセスにおける排水中の有機物負荷の総量に直接関連する、信頼性の高い値をご提供します。TOCの経時変化を見ることができるため、得られた結果に基づき操作変数を変更することで、自動的にアクションを起こすことができ、リアルタイムで賢明な意思決定を行えます。
Pedro Trinidad氏
プロダクションマネージャー
Destilerías Muñoz Gálvez社
José Carlos Merino
プロセスサポーター
Hach