Navigator社 はポルトガルに本社を構えるパルプ、紙、ティッシュメーカーで、世界的に事業を展開しています。年間 150 万トンのパルプ、160 万トンの紙、13万トンのティッシュの生産能力を有しています。ユーカリの木を主な原材料として使用し、パルプ、上質な印刷/筆記用紙、ティッシュペーパーを製造しています。コーティングされていない上質紙では欧州で5本の指に入る生産量を誇っています。
背景
環境的に脆弱な水域の近くに位置するこのティッシュペーパーメーカーは、排出制限に関する最良の環境活動を担保するために投資しています。この工場では、使用する原材料によって排水中の有機物や栄養塩の濃度に変動があります。処理プロセスの改善で重要なことは、炭素:窒素:リン(C:N:P)比率を最適に保つことです。
ソリューション
2台のオンラインTOC/TN/TP計 BioTector(バイオテクター)と連動する栄養剤・沈殿剤注入のリアルタイム制御システムを導入したことにより、流入側と放出側のTOC、TN、TPの測定値に基づいてC:N:P比率の自動調整が可能となりました。排水の値は、関連する環境機関に継続的に転送されます。
ベネフィット
リアルタイム制御システムとオンラインTOC/TN/TP計 BioTectorの導入によって、この工場では望ましいC:N:P比率をより効果的に維持できるようになった結果、製紙スラッジがより健全となり処理プロセスが大幅に改善しました。この成果から、管理に対する自信が生まれ、オペレーターの作業負荷が週7.5時間まで削減されました。
排出規制値の厳格化
Navigator社はポルトガルで4つの生産拠点をもち、うち1拠点は天然記念物の上流で排水を放流しています。この手つかずの自然を守るため、同社は多くのパラメーターに対して非常に厳しい排出規制値を遵守しています。さらに、全有機炭素(TOC)、温度、pH、導電率、排水量など、一部のパラメーターの排出値は、15分ごとにポルトガル環境庁(APA)に報告されています。
排水に含まれる栄養分の変化
設定された制限値を確実に満たし、継続的な改善を追求する一環として、この拠点の排水処理プラントは更新され、プロセスの自動化が行われました。以前は、栄養剤の自動注入はタイマー作動により行っていました。
生物処理プロセスの微生物を、最大限効率よく機能させるためには、バランスの取れた栄養分の比率が必要です。これらの栄養素の中で最も重要なのは窒素とリンで、最適なCNP比率はC:N:P=100:5:1です。(CNP比率;炭素、窒素、リンの比率)
一般に製紙工場は炭素含有量が高く、窒素やリンの含有量は通常であれば無視できるほど少ないものですが、ここでは排水中の栄養パラメーターの排出制限が非常に厳しいため、過剰投与を避けながら製紙スラッジを最適な状態に保つための十分な栄養分を投与することが困難でした。過剰投与により、排出制限の超過につながる可能性があるからです。
Navigator社では、ポルトガルの気候条件により、リンを多く含み成長が早いユーカリを原料としたパルプを使用しているため、リン含有量のバランスは特に難しい状況です。流入排水のリン含有量に大きなばらつきがあるため(0.0~2mg/L)、工場では低い規制値0.82ppmを維持するために、時折FeCl₃(塩化鉄)でリン酸を除去する必要があります(この規制値は、例外的に0.5ppmまで下げられます)。また、窒素を添加する必要もあります。その量は排水のTOC含有量に依存します。
解決策と改善点
栄養分析とRTCの調整
2019年にこの施設では自動制御システムを導入しました。これは生産工程からの生物処理プロセスの入口で、炭素と栄養分の含有量を監視するオンラインTOC計 BioTector B7000 TOC/TN/TPと連携しています。もう1台のオンラインTOC計BioTector B7000 TOC/TN/TPは、処理プラントの出口に設置され、測定したTOC値は、直接環境省に報告しています。2台の装置による栄養値セットは、RTCユニット(CNPとP-モジュール)に送られ、試薬注入ポンプを制御し、アンモニアとリン酸の含有量を、最適なC:N:P比率に調整します。
アンモニア濃度は通常低すぎるため、尿素を添加することでTOC含有量に相対的に調整します。リン酸濃度は変動するため、曝気槽に添加するか沈殿剤であるFeCl₃を添加して濃度を下げます。
※この拠点でのRTCユニット(real-time communication)はHach製の製品です。日本国内ではお取り扱いがございませんが、お客様がご利用中のシステムにBioTectorからのTOC値を送信することが可能です。