共著: Ali Doğan Demir, David Horan, Martin Horan and Seamus O’Mahony
概要
オンラインTOC計 BioTector(バイオテクター) B3500cは、復水、ボイラー/給水、冷却水、製薬用水(WFI)などのクリーンで低有機濃度の水分析用に特別に設計、開発されたオンライン液体分析装置です。本装置は、独自の湿式二段階酸化方式を用いて、液体試料中の全有機炭素(TOC)、全炭素(TC)、全無機炭素(TIC)、“パージ可能な”揮発性有機炭素(VOC、POC)、不揮発性有機体炭素(NPOC:Non-Purgeable Organic Carbon)を測定することが可能です。
BioTector 3500cは、アプリケーションやTOC分析の目的によって、測定されたすべてのパラメーターが同様に重要であるため、オンライン操作中にすべてのパラメーター結果を提供するように設計されています。
本研究では、BioTector 3500cがTOC、TC、TIC、VOC(POC)およびNPOCパラメーターを標準的な分析サイクル時間である6分で測定できることを実証しました。
BioTectorは、非分散型赤外線(NDIR)CO₂分析計で測定されたCO₂データを用いて、分析時間約3分以内に試料中の異常な高濃度の炭素を検出することができる「予測的CO₂アラーム」機能を備えています。また、BioTectorでは、「プログラム可能な分析頻度」で試料のTICおよびNPOC含有量を測定することができるため、分析サイクルタイムを増やすことなく、揮発分を含むTOC分析が可能です。また、TCチェックポイントの濃度レベルから決定される可変頻度でTICとNPOCの分析を行うことも可能です。
はじめに
近年TOC分析は、水質汚濁の判定、工程管理、製品ロスの防止、廃棄物の最小化に使用される一般的な手法であり、信頼度の高いオンライン法として業界に受け入れられています。
JIS規格において、TOCは「水中に存在する有機的に結合した炭素の合量」、TCは「水中に存在する有機的に結合した炭素および無機的に結合した炭素(元素状炭素を含む) の合量」とTICは「水中に存在する無機的に結合した炭素の合量」と、それぞれ定義されています。
VOC は、「パージ可能な有機炭素(POC)であり、TICストリッピング(酸性化した試料をCO₂や有機化合物を含まないキャリアガスでパージすること)中に水試料から部分的に脱離する可能性」があります。
NPOCは、「TICストリッピング中に水中から流出しない非浸透性有機炭素」です。[1]
TOCは、水中に存在する溶存および、非溶存の有機物の炭素含有量を示す指標であり、有機物の性質や種類に関する情報を与えるものではありません。試料中に存在する「全」有機炭素の尺度です。水の試料には、TOCに加えて、二酸化炭素や炭酸イオンの形でTICが含まれている場合があります。したがって、TOC測定の前に、試料を酸性化し、酸素などのキャリアガスでパージすることにより、TICを除去することが不可欠です。
この工程は、一般に「TICストリッピング」または「TICスパージング」と呼ばれています。ベンゼン、トルエン、シクロヘキサン、クロロホルムなどのパージ可能な有機物質は、TICストリッピングの際に一部が流出することがあります。このような揮発性物質が存在する場合、TOC濃度は、TOC=TCーTICで求められます。
つまり、TCとTICの両方を測定し、TCからTICを差し引くことでTOCを算出します。この方法は,特にTICがTOCより小さい試料に適しています。差分法を用いる場合、TOCの値はTICより大きいか、少なくとも同程度の大きさであることが望ましいです。[1, 2]
TOCに加え、TICも復水、ボイラー/給水などのアプリケーションで監視する必要がある重要なパラメーターです。ボイラー/給水や工業用蒸気発生システムでは、復水ラインの炭酸腐食がしばしば深刻な問題となります。これは、ボイラー内で炭酸ガスが生成されるためです。炭酸ガスは蒸気とともに運ばれ、復水ライン内で再溶解します。炭酸は水に二酸化炭素を溶かしたもので、「炭酸水」とも呼ばれます。炭酸は水中で炭酸塩と重炭酸塩の2種類の塩を形成します。炭酸ガスが凝縮水に吸収されるとpHが低下し、その結果生じる、酸性の溶液が重炭酸鉄Fe(HCO₃)₂の生成を介して、ボイラーおよびボイラーパイプの壁を腐食します。[3]
地球の水循環では、太陽によって水域が温められると、水が蒸発し始めます。蒸発した水は大気中に集まり、雲となります。雲に含まれる水蒸気が十分に冷えて凝縮すると、雨が降り始めます。降り始めた雨は、不純物がなく、pH7と純粋で、大気中の酸素や二酸化炭素と親和性が高く「ハングリーウォーター」と呼ばれています。雨粒は大気中を通過する際に、酸素と二酸化炭素を吸収します。
大気中の二酸化炭素の発生源は、化石燃料の燃焼、発酵、呼吸などによるものがあります。二酸化炭素は雨を酸性にし(酸性雨)、ボイラーの復水システムに含まれる二酸化炭素の主な原因となります。雨は地中に入ると石灰岩を溶かし、他の溶存・浮遊固形物を受け取るのを助けます。ボイラーや給水設備に含まれるこれらの地下鉱物は、ボイラーのスケールの原因となります。
蒸気ボイラーの水循環は、地球の水循環と似ています。蒸気ボイラーのシステムには、酸素、二酸化炭素、固形物といった3つの破壊的な要素があります。ボイラーの水が加熱され、蒸気に変化すると、遊離酸素が放出され、固形物から二酸化炭素が放出され、固形物が析出します。蒸気が使用されると冷却され、蒸気システム内でドレンに変わります。この凝縮水は、雨滴と同じように、二酸化炭素や酸素との親和性が高い「ハングリーウォーター」です。ドレンは冷えると、二酸化炭素や酸素などの気体が水に溶けやすくなります。二酸化炭素は冷却された凝縮水に吸収されて酸性となり、地球の水循環の中で見られる「酸性雨」のような状態を作り出します。この酸性の状態は、鉄パイプを侵食し、復水パイプの底に溝を作り、時にはパイプの中まで侵食します。
水道管や井戸から送られてくる原水には、二酸化炭素を含む不純物が含まれています。凝縮水が冷えると、炭酸ガスは水に溶けやすくなります。炭酸ガスが水と結合すると、pH6.9からpH4.4程度の炭酸が生成されます。この酸性の状態がスチームドレン配管系で発生し、配管が炭素鋼の場合、配管が損傷する可能性が高くなります。この損傷は、一般的な全体腐食、応力がかかった金属での局所的な孔食や亀裂となります。[4]
冷却水モニタリングは、一般に、水溶媒系に流入する可能性のある揮発性有機汚染物質の特性評価を行うものです。揮発性有機化合物の存在を確認するためには、一般的なモニタリングや指標となるモニタリングが必要な場合もありますが、冷却水中に存在する特定の化合物の特徴を把握することも必要です。[5]
熱交換器は、プロセスストリームから熱を除去するために使用されます。例えば、冷却塔(クーリングタワー)は、川の水を使うことで冷却されます。熱交換器の一般的な問題の1つは、熱交換器のシールやチューブが破損し、プロセス水と冷却水を混合してしまう「ブレークスルー」です。このような不具合により、有機物や揮発性有機炭素化合物の放出、冷却塔の汚染などの問題が発生することがあります。
これらの事実は、復水、ボイラー/給水、冷却水などの用途におけるTOC、TC、TIC、VOC測定の重要性を物語っています。アプリケーションの種類にもよりますが、一般的に1つのパラメーター(例えば、TC)のみの分析では、有用なプロセス決定を行うには十分ではありません。BioTector B3500cのような複数パラメーター分析(TOC、TC、TIC、VOCなど)は、単一パラメーター分析よりも有用であることが産業界で実証されています。
分析の種類と操作
1. 液体試料中の全無機炭素(TIC)および全有機炭素(TOC)を測定するTIC & TOC(NPOC)システム
TIC & TOCシステムから得られるTOCの結果は、VOC(POC)化合物がTICストリッピング中に試料から流出するため、NPOCを表します。TIC & TOCシステムは、揮発性有機物質の濃度が非常に低い、あるいは重要でない試料に適しています。
2. 全炭素(TC)測定システム 試料中の全炭素(TC)含有量を測定するシステム
TCシステムから得られるTC結果は、TIC、NPOC、VOCの含有量の合計を表します。
3. VOCシステム:試料中のTIC、TOC、TCおよびVOC含有量を測定するシステム
VOCシステムでは、TCとTICの測定値からTOC = TC – TICとしてTOCの結果が算出されます。したがって、TOCの結果には、試料中に存在する揮発性物質が含まれます。言い換えれば、TOCの結果はNPOCとVOC(POC)含有量の合計を表しています。
TIC & TOC(NPOC)システムとして構成されたBioTectorの動作をまとめると、次のようになります。
1. 濾過されていない代表的な液体試料をぺリスタポンプでB3500cに送ります。正確な量の試料がリアクターチャンバーに注入されます。
2. 酸試薬(通常、硫酸)の添加により、試料の無機炭素含有量を放出させます。放出された炭酸ガス(CO₂)は酸素(O₂)キャリアガスによって移動し、非分散型赤外線(NDIR)CO₂分析装置で全無機炭素(TIC)として測定されます。この段階を”TIC”段階と呼びます。
3. 高pH試薬(通常、水酸化ナトリウム)をリアクターに添加し、オゾン発生器のスイッチを入れます。高pH試薬とオゾンの存在下、ヒドロキシラジカル(•OH)が生成されます。試料液の効果的で完全な酸化は、過剰なヒドロキシラジカルの存在下で行われます。この段階は「ベース酸化」段階と呼ばれ、湿式二段階酸化方式プロセスの第1段階を形成します。ベース酸化フェーズでは、すべての有機物が酸化され、炭酸塩(主成分)とシュウ酸塩(副産物)が生成されます。
4. 触媒を含む酸試薬を反応器に添加します。オゾン発生器のスイッチを入れます。酸性の環境では、副生成物であるシュウ酸塩が酸化され、CO₂ガスの形で放出されます。主成分である炭酸塩もCO₂ガスとして排出されます。この段階は「TOC酸化」段階と呼ばれ、湿式二段階酸化方式プロセスの第2段階と最終段階を形成します。このCO₂ガスは非分散型赤外線(NDIR)CO₂アナライザーで測定されます。測定されたTOCの結果は、試料の不揮発性有機体炭素(NPOC)要素を表します。
BioTectorをTCシステムとして構成した場合、上記のTICフェーズは実施されません。TC分析ではTICストリッピングが行われないため、試料から揮発性有機物質が流出することはありません。
したがって、酸化処理が終了した時点で、TIC、NPOC、POCの合計が全炭素(TC)測定結果となります。
TC = TIC + NPOC + POC
VOCシステムとして構成されたBioTectorを用い、TC分析とTIC&TOC(NPOC)分析を組み合わせて実施します。得られたVOCの結果は、試料中のパージ可能な有機炭素(POC)含有量を表しています。TC分析とTIC & TOC(NPOC)分析が終了すると、以下のデータが得られます。
- TC分析で測定したTC結果
- TIC分析で測定されたTICの結果
- 揮発分を含むTOCの結果(TOCv)、TCとTICの測定値の差から以下のように計算されます。
TOCv = TC – TIC - VOC 分析における TOC の結果は、NPOC と POC の合計を表します。
TOCv = NPOC + POC - VOC(POC)結果
測定された TC(TC 分析による)と測定した TIC および、TIC&TOC(NPOC)で測定したNPOCの合計との差から計算されます。
VOC=TC-(TIC+NOPC)
BioTector B3500cをVOCシステムとして構成した場合、TIC & TOC(NPOC)分析を好みの頻度で行うようにプログラムすることが可能です。つまり、TC分析を6分サイクルで連続的に行い、同じく約6分かかるTIC&TOC(NPOC)分析を指定の頻度で行うよう、ユーザーにより本機をプログラムすることで、TC、TIC、TOCv、VOCパラメーターの全ての結果を得ることが可能です。例えば、TIC&TOC(NPOC)分析の頻度を10とプログラムした場合、通常通りTC分析を6分周期で行い、TIC&TOC(NPOC)分析を10分析周期毎、本例では約60分毎に行います。
BioTector B3500cをVOCシステムとして構成した場合、自動チェックポイントとなるTC濃度レベルを設定し、TC分析に加えてTIC&TOC(NPOC)分析も行うことが可能です。TCの結果が高い場合、この自動チェックポイントの操作により、TCの結果の増加がTICおよび/またはTOCvの含有によるものかどうかを特定することができます。
例えば、B3500cのTC濃度チェックポイントが4mgC/L(4ppm TC)に設定されているとします。TCの測定結果が4mgC/Lを超えた場合、B3500cは上記のTIC&TOC(NPOC)分析頻度に関係なく、同じ試料に対して直ちにTIC&TOC(NPOC)分析を実行します。つまり、プログラムされた「自動チェックポイント」のTC濃度レベルに応じて、可変の頻度でTIC&TOC(NPOC)分析サイクルを実行します。この操作により、TC結果の増加がTICの増加によるものか、TOCv濃度の増加によるものかを判断することができます。
上記のようなBioTector VOCシステムの運用により、不要なTIC&TOC(NPOC)分析を行うことなく、短時間でTC結果を得ることができるメリットがあります。また、TC濃度の自動チェックポイントを持つBioTector VOCシステムの動作は、TIC濃度が変化する試料に適した分析が可能です。すなわち、液体試料中のTIC濃度が特定の現場やアプリケーションの条件によって変動することが分かっていても、BioTector VOCシステムの操作は、液体試料中の有機および無機濃度変化を正確に測定し、検出するのに適しています。
図 1 は TC の分析サイクルと TC、TIC、NPOC 分析を示したもので、上記の例で述べたように10回目の分析サイクルごとに行われるようにプログラムされています。この図は、すべてのTC結果が一般的な2mgC/Lの濃度レベルであり、自動チェックポイント濃度(上記の例では4mgC/Lと仮定)以下であることを示すものです。
図2は、TCの分析サイクルと、10回目の分析サイクルに行われるようにプログラムされたTC、TIC、NPOC 分析を示したものです。この図のように、3回目の分析で6mgC/LのTCが測定されています。TCの測定結果はTC濃度チェックポイント(上記の例では4mgC/L)を超えているため、4回目の分析で直ちにTC、TIC、NPOC 分析を実施します。この例では4回目の分析で5mgC/Lとなり、TCが高くなった原因はTICの結果であることが分かります。このように、5回目の分析ではTCの測定値は通常の2mgC/Lの濃度レベルに戻り、TC濃度のチェックポイントを下回っている。従って、B3500cはプログラム通り、TC分析サイクルと10分析サイクル毎のTIC、NPOC分析を行い、正常動作を継続します。
分析頻度をプログラム可能なVOCシステム運用と、プログラム可能なTCチェックポイント濃度レベルを用いてTICおよびNPOC分析を可変頻度で実施する機能により、通常6分の分析サイクル時間を増やすことなく、必要に応じて試料の複数のパラメーターを測定し、プロセスの問題を検出、特定することが可能です。
湿式二段階酸化方式のプロセスと化学
BioTectorは、独自の酸化プロセスにより柔軟な運用を可能にし、特定のアプリケーションのための特定の要件を満たすようにプログラムすることができます。特許取得済みの湿式二段階酸化方式プロセスの主要な化学反応のいくつかをまとめると、以下のようになります。
TIC & TOC(NPOC)システムとして構成されたバイオテクターでは、TIC段階において、硫酸と炭酸塩の反応により水(H₂O)とCO₂ガスが生成されます。
CO₃²⁻ (aq) + H⁺ → CO₂ (g) + H₂O (l) (1)
ベース酸化の段階では、以下のようにヒドロキシラジカルによる酸化が行われます。
CxHy (aq) + •OH → CO₃²⁻ (aq) + H₂O (l) (主成分) (2)
CxHy (aq) + •OH → C₂O₄²⁻ (aq) + H₂O (l) (副産物) (3)
酸化工程の最後には、主要生成物である炭酸塩(CO₃²⁻)と、副生成物であるシュウ酸塩(C₂O₄²⁻)が生成されます。酸化は、以下のようなTOC酸化段階を経て完了します。
CO₃²⁻ (aq) + H → CO₂ (g) + H₂O (l) (主成分) (4)
C₂O₄²⁻ (aq) + 触媒→ CO₂ (g) + H₂O (l) (副産物) (5)
湿式二段階酸化方式では、分析装置のリアクター内に塩が蓄積したり、目詰まりしたりする問題が発生しません。ヒドロキシラジカルを用いた積極的な酸化プロセスにより、すべての汚染物質と接液リアクター部品が洗浄されます。[6]
CO₂ 予測アラームの機能と操作方法
BioTector B3500cは、プログラムされた各パラメーターの結果に対して、分析サイクルの最後に送られる標準的なアラーム信号に加えて、非分散型赤外線(NDIR)CO₂分析装置で測定されたCO₂データを用いて、分析時間約3分以内(アプリケーションによる)に、試料中の高濃度炭素を検出できる予測的CO₂アラーム機能を備えています。
予測CO₂アラーム機能は、TCまたはTOC(NPOC)測定値が高い場合の早期警告として使用できます。この機能は、ソフトウェアの標準的な予測機能で、あるppmのCO₂濃度レベルで起動しプログラムすることで、各特定の流路の高TCまたはTOC(NPOC)結果の可能性を検出することが可能です。プログラムした場合、分析サイクル中に発生するCO₂ピークの上昇スロープから、異常に高いTCまたはTOC(NPOC)の結果を非常に早く警告します。
図3は、TIC & TOC(NPOC)システムとして構成されたBioTector B3500cの特定の流路の分析サイクルから得られた典型的なTICおよびNPOC CO₂ピークデータの一例を示しています。この図に示されるように、TOC酸化段階の約180秒の時点で、NDIR CO₂アナライザーで測定されたCO₂データは約2000ppmです。
図3に示した6分間の分析サイクルの最後に得られたNPOCの結果が1mgC/Lであり、この濃度はこの特定の流路で測定された典型的なNPOCレベルを表していると仮定します。言い換えれば、分析開始から約180秒後にNPOCの測定値がこの濃度レベルにあるとき、CO₂の値は約2000ppmのCO₂です。
また、CO₂予測アラームレベルが5000ppm CO₂にプログラムされていると仮定すると、この流路ではNPOC濃度が2mgC/Lより大きいことに相当します。言い換えれば、BioTector B3500cは、5000ppm CO₂以上のNPOC CO₂ピークデータに対して早期アラーム信号を送信するようにプログラムされており、この試料では2mgC/L以上のNPOC濃度を表しています。
図4の例では、測定されたCO₂データがCO₂アラームレベル(5000ppm CO₂としてプログラムされている)よりも大きいため、分析装置は6分間の分析サイクルの途中で、サイクルの最後に報告されるNPOC結果を待たずに早期アラーム警告を発生させることになります。この早期アラーム警告は、異常に高い濃度のNPOC結果を示し、ユーザーは時間を無駄にすることなく、必要なプロセスの予防措置と行動をとることができます。この例は、BioTector B3500cの予測的CO₂アラーム機能が、非常に早い段階で高濃度の有機物を検出し、関連するアラーム信号を必要とするアプリケーションで使用される有益な機能であることを示しています。
CO₂アラーム濃度(ppm CO₂ピークデータ)は、CO₂ピークの高さをわずかに変化させる可能性のある温度の影響を考慮し、慎重に選択される必要があります。言い換えれば、実際の異常な高濃度アラーム警告のみを発生させ、人為的なアラーム警告の可能性を防ぐために、各特定流路のppm CO₂アラーム設定には十分なマージンを与える必要があるのです。
単一流路で試料中の有機物濃度に応じて自動的に分析レンジを変更するように構成されている場合、前述の図4のようにCO₂予測アラーム機能が正確に機能するよう、一つの固定した動作レンジで分析を行うようにシステムを構成することを推奨します。
まとめ
本研究では、復水、ボイラー・給水、冷却水用途におけるTOC、TC、TIC、NPOC、VOC測定の重要性を例示しました。復水やボイラー給水などの用途では、TCやTOC測定に加えて、TIC測定も重要なパラメーター測定になり得ることが示されています。BioTector B3500cで行われるTOC、TC、TIC、NPOC、VOC分析などの複数パラメーター分析は、冷却水モニタリングなどの産業用途において、単一パラメーター分析(例えば、TC)よりも有用で常に優れていることが証明されました。
BioTector B3500cは、6分の分析サイクルタイムで試料のTCまたはTOC(NPOC)含有量を測定します。VOCシステムをプログラム可能な分析頻度で動作するように設定でき、プログラムされたTCチェックポイント濃度レベルに応じて可変の頻度でTC、TIC、NPOC分析を実行できることが実証されています。この動作により、プロセス上の問題を検出、特定するため、必要なときに試料の複数のパラメーターを測定し、分析サイクルタイムを増加させることなく、揮発分を含むTOCv分析を実行することができます。
<参考文献>
[1] Water Analysis Guidelines for the Determination of Total Organic Carbon (TOC) and Dissolved Organic Carbon (DOC), ISO-CEN EN 1484:1998, ICS 13.060.30, CEN European Committee for Standardization, Brussels, 1998, pp. 3-4.
[2] Eaton, A.D., Clesceri, L.S., Rice, E.W., Greenberg, A.E., “5310 Total Organic Carbon (TOC), A, B, C & D.” Standard Methods for the Examination of Water & Wastewater, 21st Centennial Ed., American Public Health Association (APHA), American Water Works Association (AWWA), Water Environment Federation (WEF), Washington, D.C., 2005, pp. 4-130.
[3]Buecker, B. “Power Plant Water Chemistry – A Practical Guide”, PennWell Publishing Company, Oklahoma, 1997, section 8.
[4] “Boiler/Feed Water Guidelines”, Revision 2-7/12-NB-410, The National Board of Boiler & Pressure Vessel Inspectors, Ohio, 2012, pp. 2-4.
[5] “Sampling Procedures Manual”, Appendix P, Revision 1, Texas Commission on Environmental Quality, Texas, 2013, pp. 1.
[6] Demir, A.D., Horan, M., O’Mahony, S., “Two-Stage Advanced Oxidation Process as an Alternative to the Thermal and UV-Persulfate Oxidation for TOC Analysis”, S08-1-P017-Horan, The Instrumentation, Systems and Automation Society, 51st Analysis Division Symposium, April, 2006, Anaheim, CA.